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米財務省、ブラジル最高裁判事の制裁を解除、緊張緩和へ

ジモラエス氏はボルソナロ前大統領のクーデター未遂裁判を担当し、トランプ政権から批判を浴び、グローバル・マグニツキー法に基づく制裁対象となっていた。
ブラジル、最高裁判所のジモラエス判事(Getty Images)

米国は12日、ブラジル最高裁のジモラエス(Alexandre de Moraes)判事に対して今年7月に科した制裁を解除した。財務省の対外資産管理局(OFAC)が同日に更新したリストからジモラエス氏の名前を削除したことを明らかにした。

これにより、ジモラエス氏に対する資産凍結や米国内の取引禁止措置などが解除された。

ジモラエス氏はボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領のクーデター未遂裁判を担当し、トランプ政権から批判を浴び、グローバル・マグニツキー法に基づく制裁対象となっていた。

マグニツキー法は重大な汚職や人権侵害に関与した人物に対して制裁を科すことを目的としており、ジモラエス氏はその司法判断が人権侵害につながっているとされ、制裁措置が適用された。

当初の制裁ではジモラエス氏の米国内にある資産の凍結と米国市民・企業との取引禁止が含まれた。また、同判事やその他ブラジル最高裁の裁判官複数人に対してビザ制限が科され、大きな外交問題となっていた。ブラジル政府はこれを主権への干渉と強く反発、抗議していた。

制裁解除に関し、米財務省は詳細な説明を公表していないものの、両国関係の改善や外交的配慮が背景にあるとの見方が出ている。制裁解除はブラジルと米国との間で続いてきた一連の貿易・外交問題の緩和を象徴する動きとも受け止められている。これまで米国は制裁と同時にブラジル産輸出品に対する関税措置(緩和済)も発動しており、両国間の緊張が高まっていた。

ジモラエス氏は制裁当時、司法の独立性を強調し、外圧に屈しない姿勢を示していた。制裁後もブラジル国内では支持と批判が分かれ、裁判所内外で議論が続いていた。制裁解除により、同氏の国際的な活動への制約が解消される一方で、ブラジル国内の司法と政治の関係についての論争が再燃する可能性も指摘されている。

ブラジル政府はこれまで、ジモラエス氏を含む最高裁の独立性を強調し、外国政府による司法介入を強く拒否してきた。制裁解除は両国間の緊張緩和や協調路線への転換を促す契機となる可能性がある。

米国とブラジルは南北アメリカ大陸を代表する民主主義国家として、経済・安全保障・環境問題など幅広い分野での協力関係を維持する重要性を共有している。

ジモラエス氏の制裁解除は米国の対外政策と制裁運用の柔軟性を示すケースとして国際社会でも関心を集めている。今後、ブラジル国内政治や米国との関係がどのように展開するかが注目される。

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