米軍、東太平洋で麻薬密輸船を攻撃、2人殺害
この一連の攻撃はトランプ政権が南米地域に対する軍事力を増強し、ベネズエラの独裁者であるマドゥロ大統領に圧力をかける広範なキャンペーンの一部と位置付けられている。
.jpg)
米軍は12月29日、東太平洋の公海上で麻薬密輸船を攻撃し、乗組員2人を殺害したと発表した。これにより、米海軍による麻薬密輸船への攻撃は30回目となり、5か月余りで少なくとも107人が死亡したとされる。トランプ政権はこの一連の作戦を麻薬カルテルとの「武力紛争」と位置付け、正当化してきた。
この攻撃は米南方軍(U.S. Southern Command)がソーシャルメディアで明らかにしたもので、標的となった船舶が木っ端みじんになる動画も公開された。軍当局は同船が「麻薬密輸活動に従事していた」と説明しているものの、具体的な証拠は示していない。
トランプ(Donald Trump)大統領はこれらの攻撃について、薬物の流入を抑えるために必要な措置と主張し、麻薬カルテルとの対立を「武力紛争」として扱う姿勢を強調している。またトランプ氏は同日、フロリダ州パームビーチでイスラエル首相と会談した際、麻薬積み込みに使われたとされるベネズエラの港湾施設に対する攻撃についても言及し、「麻薬を積み込む全ての船舶と地域を攻撃した」と述べた。米軍や中央情報局(CIA)が関与した可能性が取り沙汰されているものの、詳細は明らかになっていない。
この一連の攻撃はトランプ政権が南米地域に対する軍事力を増強し、ベネズエラの独裁者であるマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領に圧力をかける広範なキャンペーンの一部と位置付けられている。米国はマドゥロ政権が麻薬と関係する組織を支援し、国内外への薬物流出を容認していると非難し、同国に対する国際的な圧力を強めている。マドゥロ氏はこれらの軍事行動を米国による体制転覆の試みと批判している。
この攻撃が始まって以降、米国内では一連の軍事行動に対する議論が強まっている。連邦議会内では、軍の権限や違法性を巡る懸念が表明されており、国際法や米国法に基づく行為の正当性について審議する動きもある。特に、これまでの攻撃の中には、生存者を追撃して死亡させたとされる事例があり、人権団体や一部の議員からは「越権行為」の指摘や「戦争犯罪」と評する声も上がっている。
米軍はこれまでに麻薬密輸に関連するとされる複数の船舶を標的にしており、東太平洋だけでなくカリブ海でも作戦が展開されてきた。トランプ政権はこれらの作戦を「オペレーション・サザン・スピア/南方の槍作戦」と称し、薬物流入の抑止を目的とした海軍・空軍の連携行動として進めている。支持者はこの取り組みが米国の治安維持に寄与すると評価する一方で、反対派は証拠不足や国際法違反の懸念を指摘している。
このように米軍による薬物密輸容疑船への攻撃は激しい是非両論を巻き起こし、国内外で注目を集めている。今後も作戦の継続や国際社会の反応、法的な検証が焦点となる見込みである。
