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米国、ベネズエラの石油部門に追加制裁、マドゥロ政権への圧力強化

これはベネズエラの独裁者であるマドゥロ大統領への圧力を強化する取り組みのひとつであり、対ベネズエラ政策の緊張が一段と高まっていることを示している。
ベネズエラ、国旗を振り回すマドゥロ大統領(ロイター通信)

米政府は25年12月31日、ベネズエラの原油セクターに関連する新たな制裁を発表し、同国の石油部門で活動している複数の企業と石油タンカーを対象リストに追加した。これはベネズエラの独裁者であるマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領への圧力を強化する取り組みのひとつであり、対ベネズエラ政策の緊張が一段と高まっていることを示している。

米財務省は声明で、今回の制裁対象として4社の企業とこれに関連する4隻の石油タンカーに制裁を科した発表。これらの船舶はいわゆる「影の船団」の一部とされ、所有者が不透明で船舶保険の水準が低い老朽船も含まれているという。財務省はこれらが制裁逃れに関与しているとの見解を示し、ベネズエラ産原油の取引関係者に対し「著しいリスク」が存在すると警告した。

対象となったのはパナマ籍、ギニア籍、香港籍のタンカーなど。これらはいずれも今年、アジアやカリブ海地域にベネズエラ産原油や燃料を運んだとされる。

この発表に先立ち、米国は制裁対象となった船舶のベネズエラ水域への出入りを阻止する措置も打ち出しており、これが同国の原油輸出に大きな影響を与えているとみられる。制裁と封鎖措置により、ベネズエラの25年12月の輸出量は前月比で半分近くまで落ち込んでおり、輸出がほぼ麻痺状態に陥っているとの観測もある。これに伴い、国営石油会社PDVSAでは燃料在庫への対処を迫られ、製油所の稼働維持が危ぶまれる事態となっている。

米側は今回の措置について、マドゥロ政権が原油輸出を通じて不正利益を得ているとの立場を強調している。財務省は声明で、マドゥロ政権が麻薬取引と結びついているとして、「正当性を欠く政権が石油輸出から利益を得ることを容認しない」と述べた。一方、ベネズエラ政府はこれらの非難を強く否定し、米国の政策は政権転覆を狙い同国の豊富な石油資源を掌握しようとするものだと主張している。

米国の対ベネズエラ政策は近年の原油価格の変動や国際的なエネルギー需給環境などを背景に複雑化している。国際的な原油価格は供給過剰の影響もあり2025年に大幅な下落を記録したものの、ベネズエラ情勢を巡る地政学的リスクが価格を押し上げる場面もあった。こうしたなかで、米国の制裁強化は同国の原油市場への影響を一段と強める可能性があるとみられている。

この新たな制裁措置は米国がベネズエラに対する圧力を続ける意志を示すものであり、今後の外交・経済関係に重大な影響を与える可能性がある。国際社会の対応や、ベネズエラ国内の政情の行方が引き続き注目される。

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