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米海軍、ベネズエラ沖で石油タンカーを拿捕、今月2隻目

米政府はいわゆる「影の船団(shadow fleet)」と呼ばれる、位置情報を隠したり偽装したりするタンカー群が制裁を逃れて原油を運搬しているとして、取り締まりを強化している。
米海軍の原子力空母ジェラルド・R・フォード(Getty Images)

米当局がベネズエラ沖の国際水域で制裁対象の石油タンカーを拿捕し、原油を差し押さえた。現地メディアが20日に報じた。

これはトランプ(Donald Trump)大統領の命令に基づく措置であり、ベネズエラとの緊張を一段と高める恐れがある。

ノーム(Kristi Noem)国土安全保障長官は20日、沿岸警備隊が最近ベネズエラの港を離れたタンカーを国際水域で拿捕したと明らかにした。

ノーム氏はSNSへの投稿で「米国は麻薬テロ資金に使われる制裁対象原油の違法な移動を追跡し続け、見つけ次第、阻止する」と強調。「このタンカーに積まれていた原油は制裁対象である」と述べた。

ロイター通信は米政府関係者の話しとして、「今回の摘発は沿岸警備隊が主導し海軍が支援する形で実施された」と伝えている。

詳細な位置や船名は公開されていないものの、パナマ船籍であることが判明している。船はバルバドス東方のカリブ海で停戦を命じられた。積まれていたベネズエラ産原油は約180万バレル、アジア向けとされる。

米政府はいわゆる「影の船団(shadow fleet)」と呼ばれる、位置情報を隠したり偽装したりするタンカー群が制裁を逃れて原油を運搬しているとして、取り締まりを強化している。これらの船舶は制裁対象企業や個人と関係があるとされ、マドゥロ政権の資金源になっているという。

トランプ政権は今月、制裁対象のタンカーの出入港を全面的に阻止する命令を出しており、今回の行動はこの方針に基づく2回目の取り締まりとなった。封鎖命令以降、制裁対象のタンカーの多くがベネズエラ周辺の停泊域に留まるようになり、同国の原油輸出は大幅に落ち込んでいる。これは世界の原油需給に影響を与える可能性があり、特に中国がベネズエラ油の主要買い手であることから、国際市場に不確実性をもたらしている。

ベネズエラ政府はこの行動を強く非難した。同国の石油省および国営石油会社PDVSAはコメントを控えたものの、ベネズエラ当局は「国際的な海賊行為」であり、船舶と乗組員の拉致であると主張、国連安全保障理事会など国際機関に訴える考えを示している。

今回の拿捕は米国による対ベネズエラ圧力の一環であり、同地域では米軍の増強が確認されている。米国はこれまでにも麻薬密輸対策として海軍や沿岸警備隊を派遣し、東太平洋とカリブ海で複数の船舶に対する攻撃を実施してきたが、今回の措置はベネズエラ制裁の実効性を高めるための戦略的な転換点と評価されている。

専門家はこのような強硬策が長期化すればベネズエラ経済に深刻な打撃を与える一方で、国際原油市場の供給に影響を及ぼし、価格変動を引き起こす可能性を指摘している。また、米側が制裁対象船舶以外の船をも取り締まる動きを見せていることから、国際海運や外交関係に波紋を広げるとの懸念も出ている。

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