◎国連人権理事会への請願はベネズエラの一般市民を代表して10月に行われた。
国連人権理事会は3日、南米ベネズエラのマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領が今夏の大統領選挙を欺いたという疑惑を調査するため、ベネズエラ政府に対し、集計表やその他選挙資料を破棄しないよう命じた。
同理事会は声明で、「ベネズエラ国民数百万人の政治的権利を侵害しているという告発に基づき、調査を開始する」と表明。マドゥロ政権に集計表やその他選挙資料を破棄しないよう求めた。
ベネズエラ大統領府の報道官は3日、理事会の要請に応じない姿勢を示し、「マドゥロ大統領は来年1月から予定通り3期目をスタートさせる」と主張した。
マドゥロ氏の支配下に置かれる選挙管理委員会は7月28日に行われた大統領選の集計結果を公表せず、マドゥロ氏が得票率51%で勝利したと宣言した。
しかし、野党陣営は全国の電子投票機が印刷した集計表の80%以上を確保・精査した結果、全野党の統一候補であるゴンザレス(Edmundo González)氏の得票数はマドゥロ氏に2倍以上の差をつけていたことが明らかになった。
米国を含む数カ国が選挙の勝者をゴンザレス氏と認定。選管に透明性のある集計結果を公表するよう呼びかけてきた。
しかし、最高裁判所は8月末、マドゥロ氏の勝利を認定。さらにカラカスの地方裁判所は9月、ゴンザレス氏が選挙結果を捏造し、暴動を煽ったなどとして逮捕状を発行した。
この結果、ゴンザレス氏はスペインへの亡命を余儀なくされた。
国連人権理事会への請願はベネズエラの一般市民を代表して10月に行われた。告発状を起草したブラジルの当局者は「マドゥロ政権が虚偽の結果を公表し、法廷での挑戦を妨害することによって、複数の人権侵害を行った」と主張している。
米財務省は先月末、マドゥロ政権の高官ら21人を制裁リストに追加した。
ベネズエラの経済は米政府によるマドゥロ政権への厳しい経済制裁とマドゥロ氏の後先考えないバラマキ政策で急速に悪化。GDPはマドゥロ氏が就任した2013年以降、右肩下がりとなり、2021年には10年前の2割以下に落ち込んだ。
現在のGDPはピーク時の4分の1となり、その結果、800万人近くが国外に流出。その多くが他の中南米諸国を経由して米国への移住を目指している。