米軍がベネズエラ領の麻薬関連施設を攻撃?トランプ氏が示唆
トランプ政権は今年9月以降、麻薬密輸阻止を目的としてカリブ海や東太平洋で少なくとも29回の攻撃を行い、100人以上が死亡したとされる。
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トランプ(Donald Trump)米大統領は12月26日に南米での麻薬対策の一環として「大規模施設」を攻撃したと示唆したが、具体的な詳細は明らかにしていない。トランプ氏はラジオ番組の生放送中にこの発言を行い、米軍が麻薬密輸に関連するとされる拠点を「叩いた」と述べたものの、攻撃の方法や場所、対象となった施設についての説明は一切なかった。国防総省もホワイトハウスも、この件に関して公式の説明を行っていない。
トランプ氏はこの発言の中で、カリブ海および東太平洋で麻薬密輸船に対する攻撃について言及しながら、「船が出ていく大きな施設があり、2日前にそれを壊した」「非常に強力な攻撃だった」と述べた。しかし、放送では何がどのように攻撃されたかについて具体的な情報を提供せず、国防総省もこの攻撃についてコメントしていない。これまで米軍が公表してきたのは船舶に対する空爆やミサイル攻撃で、陸上の施設に対する攻撃は初めて示唆されたものの、公式発表はない。
報道によると、トランプ政権は今年9月以降、麻薬密輸阻止を目的としてカリブ海や東太平洋で少なくとも29回の攻撃を行い、100人以上が死亡したとされる。これらは米軍や沿岸警備隊が関与し、麻薬を運んでいたとされる小型船舶を標的にしたもので、米側はこれらの攻撃を麻薬カルテルや国際的な麻薬密輸組織に対する正当な軍事行動と位置付けている。
一方で、トランプ政権のこうした軍事作戦は国内外から批判も出ている。議会の一部議員や人権団体は、実際に標的となった船舶や組織が麻薬密輸に関与しているという十分な証拠が公表されていないと指摘し、違法な殺害や越権行為になりかねないと懸念を示している。実際、これまでの攻撃については軍や政府が詳細な証拠を公開していない。報道では、米軍が「麻薬密輸船」と断定した船舶を攻撃して多数の死者を出した事例もあり、透明性の欠如が批判されている。
ベネズエラ政府はトランプ氏の施設攻撃発言に対してコメントを出していない。ベネズエラの独裁者であるマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領はこれまで、米国の軍事行動を自国への圧力や政権転覆の試みだと非難してきた。トランプ政権は麻薬対策を名目に軍事力を強化し、カリブ海域への海軍展開や石油タンカーの拿捕なども進めているが、これが地域の緊張を高める結果となっているとの見方もある。
また、トランプ氏は過去に中央情報局(CIA)にベネズエラ国内での秘密作戦を許可したと述べており、今回の「施設攻撃」がその延長線上にあるのかについても関心が集まっている。しかし、現時点で米政府各機関が正式に攻撃を認めたわけではなく、攻撃の実態や法的根拠、国際法上の正当性については多くの疑問が残されている。
トランプ政権は引き続き麻薬密輸阻止を掲げ、地域への軍事的圧力を維持する姿勢を見せているが、その手法と透明性を巡る議論は今後も続く可能性が高い。
