ベネズエラ石油禁輸、トランプ圧力で危機的状況に
ベネズエラは1日当たり約100万バレルの原油を生産しているが、制裁や設備老朽化で輸出能力が低下しており、米国の封鎖はさらなる打撃になりかねないとの指摘がある。
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12月17日、ベネズエラでは米国による制裁対象の石油タンカーの取り締まりが強化される中、人々が不安を感じつつも日々の生活を続けている。トランプ(Donald Trump)米大統領は前日、ベネズエラに対する圧力を強化するため、制裁対象の石油タンカーをベネズエラに入港させないよう命じたと明らかにした。
この命令はベネズエラの長引く経済・社会危機にさらなる影を落としている。
トランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で、制裁対象の石油タンカーを完全に遮断すると強調。専門家はこの措置が両国の関係を一段と悪化させると警告している。
トランプ氏は海上封鎖の理由として、ベネズエラが石油収入を麻薬取引やその他犯罪活動の資金源として利用していると主張しているが、具体的な根拠は示していない。
この発表はベネズエラが世界最大級の埋蔵量を誇る産油国でありながら、何年にもわたる経済・政治危機の中で石油輸出が収入の大半を占める現実を直撃する可能性がある。ベネズエラは1日当たり約100万バレルの原油を生産しているが、制裁や設備老朽化で輸出能力が低下しており、米国の封鎖はさらなる打撃になりかねないとの指摘がある。
地元住民の間では、この脅威に対する反応は複雑だ。「これまでに何度も危機を経験してきた。食料やガソリンの不足も日常的だったので、これが加わっても驚きは少ない」と首都カラカスでバスを待つ男性はAP通信に語った。
多くの市民は慢性的な物資不足やインフレ、公共サービスの劣化などの困難をすでに受け入れており、新たな封鎖の可能性を「また一つの困難」と受け止める傾向がある。
一方で専門家らは、封鎖が全面的に実施されればベネズエラ経済は壊滅的な影響を受けるとの見方を示している。それによると、原油輸出はベネズエラの輸出総額の90%を占めているため、封鎖によって外貨収入が途絶すれば他製品の輸入が困難になり、日用品や中間財などの調達がさらに難しくなると指摘する。
トランプ政権による封鎖命令は米海軍によるタンカー拿捕やカリブ海域での軍事展開といった一連の動きの延長線上にある。これに対し、ベネズエラ政府は封鎖を国際法違反と強く非難し、米国の行動を「主権侵害」として国連などで訴える姿勢を示している。
封鎖措置自体が実際にどの程度まで実行されるか、またその影響がどこまで及ぶかは依然として不透明であり、国際社会の注目が集まっている。
こうした状況の中でも、ベネズエラの多くの人々は市場へ行き、家族を世話し、仕事に出るなど、日常生活を続けている。長期化する危機の中で、不安と覚悟を抱えながらも日々の営みを維持する彼らの姿は、厳しい現実と対峙する国民のたくましさを象徴している。
