ブラジル大統領、トランプ米政権のビザ制裁を非難、緊張高まる

トランプ氏はボルソナロ氏が「魔女狩り裁判」にかけられているとして、8月1日からブラジル産輸入品に50%の関税を課すと表明。この裁判を打ち切るよう要求していた。
ブラジルのルラ大統領(左)とトランプ米大統領(Getty Images/AFP通信)

ブラジルのルラ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領は19日、米政府がブラジル最高裁判事らのビザ(査証)を取り消したことについて、「恣意的な措置であり、受け入れられない」と非難した。

ルラ氏はトランプ政権がボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領の裁判を無効にするために圧力をかけていると非難。「司法への介入であり、恣意的な理由で最高裁判事らに制裁を科した」と指摘した。

またルラ氏は「この措置は国家間の尊重と主権という基本原則に違反している」と述べた。

米国務省は18日、最高裁のジモラエス(Alexandre de Moraes)判事とその家族、裁判所関係者などのビザを取り消した。

ボルソナロ氏は息子を通じて米政府と接触。ジモラエス氏らに制裁を科すよう働きかけていたとされる。

ジモラエス氏は今年3月、トランプ(Donald Trump)米大統領の盟友であるボルソナロ氏を被告人と認定し、公判の開始を決定した。

ボルソナロ氏はクーデターを起こした罪などで起訴されている。

トランプ氏はボルソナロ氏が「魔女狩り裁判」にかけられているとして、8月1日からブラジル産輸入品に50%の関税を課すと表明。この裁判を打ち切るよう要求していた。

ルラ氏は声明の中で、「誰からの脅迫や威嚇も、ブラジルの権力や機関が最も重要とする使命、すなわち民主的な法の支配を永続的に擁護し、維持するという使命を損なうことは決してないだろう」と述べた。

ブラジル司法省によると、ビザを取り消された人の中に検事総長も含まれているという。

ブラジル最高裁は18日、ボルソナロ氏が自らに対する裁判をやめさせようと米政府に接触するなどして、司法を妨害したとして、夜間と週末の自宅軟禁やSNSの使用禁止などを命じた。

TVグローボによると、ルラ氏の支持率はトランプ政権による圧力が高まって以来、右肩上がりで上昇している。

複数の世論調査会社の平均値は支持が45%、不支持が48%になっている。支持率は一時30%を下回っていた。

ブラジルと米国の右派はジモラエス氏がブラジルの民主主義を破壊していると主張。最高裁が検閲を含む抑圧を推進していると非難してきた。

ブラジル最高裁は3月初め、米国のオンライン動画共有プラットフォーム「ランブル」の国内利用を禁じるというジモラエス氏の決定を支持した。

ランブルは右派に人気の動画プラットフォーム。ブラジル最高裁はヘイトスピーチと虚偽の情報を広めた疑いで本国で捜査を受けているブラジル人ユーザーのアカウントをブロックするよう命じている。

ブラジル最高裁は2月、米実業家マスク(Elon Musk)氏が所有するX(旧ツイッター)に対し、司法命令に従わなかったとして810万レアルの罰金刑を科した。

Xは昨年8月、ブラジル規制当局にブロックされた。

それ以来、ブラジルと米国の右派ユーザーはジモラエス氏を「悪の枢軸」と呼び、同氏の偽情報を流すなどして誹謗中傷している。

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