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ブラジル国営ペトロブラス、5カ年計画の設備投資削減へ

当初の2025–29年の投資見込み額は約1110億ドルであったが、新プランでは約1090億ドル、およそ2%の削減となる。
国営ブラジル石油公社(ペトロブラス)のロゴ(Getty Images)

ブラジルの国営ブラジル石油公社(ペトロブラス)は26日、5カ年計画での設備投資をわずかに削減する方針を明らかにした。ルラ政権下で初めての投資削減となる見込みだ。

ロイター通信によると、当初の2025–29年の投資見込み額は約1110億ドルであったが、新プランでは約1090億ドル、およそ2%の削減となる。最終決定は同社取締役会の承認を経る必要があるものの、事実上の削減とみられている。

ペトロブラスが投資削減に踏み切った背景には、原油価格の低迷がある。今年11月時点で、北海ブレント原油は1バレルあたり約62.35ドルと、年初の70.85ドルに比べ大きく低下していた。

ペトロブラスは2026年の資本支出額を約196億ドルと見込んでおり、その多くは既に契約済みだという。このことから、今後大幅な追加投資の余地は小さいとの見方がある。

同社関係者は、今回の見直し後も借入の拡大や配当政策の変更は行わず、効率化と既存設備の生産性拡大に注力する姿勢を示している。具体的には、既存の生産設備や製油所のキャパシティ拡充を通じて、コストを抑えつつ生産・精製能力を高める方針だ。

例として、浮体式生産装置の稼働拡大が挙げられる。同装置は当初1日あたり22.5万バレルの生産を見込んでいたが、今年10月には27万バレルを記録。これを契機に、同様の既存設備を見直すことでコスト効率を高める狙いだ。

今回の投資削減は、ボルソナロ前政権時代に行われた一連の資産売却・再編に続くものであり、ペトロブラスの投資姿勢の変化を象徴するものだ。

一方で、これは同社にとって全面的な経費削減ではなく、むしろ「低価格・低収益の下でいかに効率を維持するか」という戦略の表れだ。生産性の高い設備の活用と精製能力の拡張、供給体制の見直し、既存設備のフル活用――といった現実的かつ慎重な対応が進められるだろう。

この動きは、かつての積極的な投資拡大路線からの転換を示すと同時に、国際的な原油価格の変動とエネルギー業界を取り巻く不確実性が、ブラジル国内の主要エネルギー企業の経営判断に影響を及ぼしていることを物語っている。

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