◎米国を含む国際社会を困惑させた騒動はカスティジョ前大統領のテレビ演説でスタートした。
ペルーのボルアルテ(Dina Boluarte)副大統領は7日、カスティジョ(Pedro Castillo)大統領が罷免されたことを受け、大統領に就任した。
ペルー初の女性大統領は歴史的な弾劾投票後に誕生した。
農村部出身の元教師であるカスティジョ氏は弾劾投票の数時間前、議会を一時的に解散し、「特別緊急政府」を設置するとテレビ演説で発表した。
議会はこれを「クーデター」と呼び、糾弾。解散宣言を無視して弾劾決議案を採決し、賛成多数で採択した。
ボルアルテ氏は劇的な1日を締めくくる就任演説で憲法秩序を回復すると誓い、議会に「停戦」を呼びかけた。
またボルアルテ氏はカスティジョ氏の任期である2026年7月まで政権を担うと述べた。
ボルアルテ氏は議会に対し、「政治危機を克服するためには助け合いの精神が必要だ」と訴えた。「私が求めるのはこの国を救うための対話、協議、時間です!」
米国を含む国際社会を困惑させた騒動はカスティジョ氏のテレビ演説でスタートした。
カスティジョ氏は野党に過半数を握られる議会を解散すると宣言。議会はこれをクーデターと呼び、一部の閣僚も辞意を表明した。
憲法裁判所は「馬鹿も休み休み言え」と非難し、米国は決定を覆すよう強く要請した。
軍と国家警察は共同声明で、「憲法秩序を回復する議会の決定を尊重する」と述べた。一部の地元メディアはカスティジョ氏が軍に「働きかけた」と報じているが、詳細は不明である。
議会がカスティジョ氏の弾劾決議案を採決したのは今回で3回目。与党議員も突然の解散宣言を許さなかった。
カスティジョ氏は農村部出身の元教師で、教育や医療のサービス向上などを公約に掲げ、昨年の大統領選で勝利し、左派政権を発足させた。
しかし、修士論文の盗用疑惑や汚職など、少なくとも6つの疑惑で批判に直面し、厳しい政権運営を余儀なくされていた。
カスティジョ氏はテレビ演説で、「国土の縦横に広がる市民の要望に応え、法の支配と民主主義の再確立を目指す異例の政権樹立を決定した」と述べ、国民が議会の解散を望んでいると主張した。
カスティジョ氏は9カ月以内に新しい憲法を起草し、新議会を招集すると主張。それまでの間は政令によって国を統治するとし、外出禁止令を発令すると宣言した。
しかし、議会はこの主張を却下し、弾劾決議案を断行。賛成101票ー反対6票(棄権10)でカスティジョ氏をクビにした。
地元メディアによると、カスティジョ氏はリマの警察署に出頭したという。逮捕されたか否かは不明。
国家警察はツイッターに関係者と談笑するカスティジョ氏の写真を投稿している。
その後、カスティジョ氏が検察に書類を提出する映像が公開された。
ペルーは近年、複数の大統領が政権を追われるなど、不安定な状態が続いている。
2020年にはわずか1週間で3人の大統領が誕生した。
1985年~2020年の間に同国を率いた元大統領6人が汚職やマネーロンダリングで捜査の対象となっている。
そのうちの1人で1985年~1990年、2006年~2011年まで大統領を務めたガルシア(Alan Garcia)氏はブラジルの建設会社から賄賂を受けとったいう疑惑で拘束される前に自殺した。