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ペルー、戦闘機購入へ、空軍司令官が発言、10月中に契約予定

来月中に契約を結ぶ予定で、米防衛・航空大手ロッキード・マーチンのF16やスウェーデンの防衛企業SAABのグリペンが候補に挙がっている
ペルー空軍の戦闘機(Getty Images)

ペルー空軍が戦闘機の購入を検討している。空軍の司令官が21日、明らかにした。

それによると、来月中に契約を結ぶ予定で、米防衛・航空大手ロッキード・マーチンのF16やスウェーデンの防衛企業SAABのグリペンが候補に挙がっているという。

ペルー空軍の司令官はカナダ・モントリオールで開催された国際民間航空機関(ICAO)のイベントで講演。新しい戦闘機はペルーの防衛に欠かせないと強調した。

また司令官は「新しい戦闘機の購入は急務であり、そうしなければ、我々は無防備な状態になってしまうだろう」と述べた。

米国務省は先週、F16戦闘機および関連するロジスティクスとプログラム支援の要素をペルーに販売する可能性を示した。

この取引の推定額は34億2000万ドルと見積もられている。

ペルーは最終的に合計24機の戦闘機を購入することを検討しているが、最初の契約は12機となる予定だ。

ペルー空軍1929年に創設された。第一次世界大戦後、航空戦力の必要性が世界的に認識される中でペルーも独自の航空部隊を整備し、南米の中では比較的早期に空軍を持った国の一つである。ペルー空軍は国土防衛に加え、国内の治安維持、麻薬取締り、災害時の人道支援など多様な任務を負っている。

組織は航空作戦司令部を中心に編成され、首都リマ近郊のカヤオに主要基地を置く。航空団は戦闘機部隊、輸送部隊、偵察部隊などに分かれ、全国各地に配備されている。航空士官学校は国内の主要なパイロット養成機関であり、航空技術者や航空管制官の教育も担う。

装備面では冷戦期からソ連製・ロシア製戦闘機を導入したことが特徴的で、スホイ25攻撃機やミグ29戦闘機を運用している。ミグ29は近代化改修を受け、一部はレーダーや電子装備を更新し、空対空・空対地任務に対応可能となっている。また、フランス製のミラージュ2000戦闘機も保有しており、異なる起源の機材を併用しているのがペルー空軍の特徴である。輸送機はC-27Jスパルタンや旧来のアントノフ機を運用し、国内の山岳地帯やアマゾン地域における補給や災害救援で大きな役割を果たしている。

ペルー空軍は南米諸国との軍事的均衡を常に意識してきた。特にチリとの関係は歴史的に緊張があり、アタカマ砂漠を巡る戦争以来、航空戦力の整備が国家戦略上の優先課題とされてきた。そのため空軍は陸軍・海軍と並び、国防政策の中核を占めている。

一方で、課題も少なくない。老朽化した航空機の更新は遅れがちで、整備や部品調達の難しさが稼働率に影響を与えている。財政制約から最新鋭機の導入は進みにくく、近代化は段階的に行われている。また、国内では麻薬組織との戦いが続いており、空軍はアマゾン地域での偵察・輸送任務や、不法飛行機の迎撃といった治安維持任務にも投入されている。

加えて、ペルーは地震や洪水など自然災害の多い国であるため、空軍は救援物資輸送や被災者避難といった人道支援活動に頻繁に動員されている。こうした活動は国民からの信頼を高める要因ともなっている。

ペルー空軍は南米地域の中では中規模だが、地政学的条件と歴史的背景から重要な役割を担っており、戦闘機・輸送機・ヘリコプターを駆使して国土防衛から災害対応まで幅広い任務を遂行している。その存在は、単なる軍事力にとどまらず、国家安全保障と社会安定の柱の一つといえる。

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