ペルーの環境破壊と違法金採掘、選挙戦の争点にならず
ペルーでは近年、金価格の高騰を背景に違法な金採掘が急速に拡大している。
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南米ペルーで実施される大統領・議会選挙を前に、同国が直面する深刻な環境問題である「違法採掘」への対策が、選挙戦の主要争点としてほとんど扱われていない実態が浮き彫りになっている。専門家は違法採掘が同国最大の違法経済活動となり、環境破壊や公衆衛生への影響を拡大させているにもかかわらず、政治的関心の低さが問題解決を遅らせていると警鐘を鳴らしている。
ペルーでは近年、金価格の高騰を背景に違法な金採掘が急速に拡大している。2025年にはその規模が115億ドル以上に達し、最大の違法産業とされてきた麻薬取引を上回った。こうした採掘活動はアマゾン地域や先住民の居住地へと広がり、森林破壊や水質汚染を引き起こしている。
特に問題視されているのが「水銀」による汚染である。違法採掘では金の分離に水銀が使用されることが多く、河川や魚類を通じて人体に蓄積される。これにより、先住民コミュニティや河川に依存する住民の健康被害が深刻化している。専門家はこうした影響が長期的に生態系と生活基盤を脅かすと指摘してきた。
しかし、今回の選挙において多くの政党は違法採掘に対する包括的な政策を提示していない。分析によると、政党の約6割以上がこの問題に十分に触れておらず、具体的な対策を明確に示しているのはごく一部にとどまる。候補者の中には金の流通追跡や環境活動家の保護といった施策を掲げる者もいるが、いずれも断片的で、国家的戦略とは言い難い。
背景には、政治と違法経済の複雑な関係がある。環境法の専門家は違法採掘が巨額の利益を生むため、一部の政治勢力がその恩恵を受けている可能性を示唆している。また、非公式採掘者の合法化を目指す登録制度が乱用され、実質的に違法活動の温床となっているとの批判もある。
さらに、これまでの政府の取り組みも十分な成果を上げていない。取り締まりの強化や法整備が試みられてきたものの、法執行の弱さや政治的圧力により効果は限定的であった。近年では検察や司法当局の権限が弱められ、組織犯罪としての違法採掘の摘発が難しくなっているとの指摘もある。
違法採掘は単なる環境問題にとどまらず、暴力や犯罪の拡大とも結びついている。アマゾン地域では武装集団の関与や土地の不法占拠が多数報告され、地域社会の安全を脅かしている。専門家はこのまま対策が講じられなければ、生物多様性の喪失や社会不安の拡大が不可避だと警告する。
こうした状況にもかかわらず、選挙戦では治安や経済成長といったテーマが優先され、違法採掘は周縁的な扱いにとどまっている。だが、この問題は国家の持続可能性に直結する重要課題であり、次期政権には包括的かつ実効性のある対策が求められる。違法採掘の拡大を放置すれば、環境破壊と社会的コストはさらに増大し、ペルーの将来に深刻な影響を及ぼすことになるだろう。
