ベネズエラの石油輸出が鈍化、トランプ圧力でタンカー出航できず
これらの動きはベネズエラの主要輸出源である石油産業への圧力を一段と強め、同国経済に深刻な影響を及ぼす可能性があるとの見方が出ている。
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米国による石油タンカー拿捕(だほ)や阻止行動を背景に、ベネズエラの石油積み込みが大幅に減少し、多くの船舶が進路を変更する事態となっている。石油業界と船舶関係のデータ、関係者の話を総合すると、ベネズエラ国内港間での積み替えを除き、輸出向けの積み込み・出航が停滞していることが明らかになった。
米沿岸警備隊は今月、制裁対象となっているベネズエラ産原油を積んだ大型タンカーを拿捕したほか、週末には2隻目の関連船舶を阻止した。1隻は制裁対象の空船、もう一隻は中国向けの積荷を積んだ非制裁船である。米政府は詳細を公表していないが、ドトランプ(Donald Trump)大統領が制裁対象船に対するベネズエラ出入りの全面的な「封鎖」を発表したことが船主らを警戒させ、船舶の行動に影響を与えている。
積み込み遅延の要因には、国営石油会社PDVSAのサイバー攻撃による混乱もある。PDVSAは先週のサイバー攻撃で中央システムが機能不全に陥り、書類管理を手作業で行うなど復旧の途上にあるという。給与支払いの遅延も報告され、業務執行能力が低下しているとの指摘がある。
これらの影響で、ベネズエラ沖には積み込み後に出航できず滞留するタンカーが増加し、出航予定の船舶も引き返すか、積み込み計画を保留するケースが相次いでいる。船舶追跡データによると、積荷を積んだ船が進行方向を変えたり、船主からの指示を待つために航行を停止する例が見られるという。
国際市場では既に影響が表れており、北海ブレント先物は22日に2.17%上昇、米WTIも同程度上昇し、供給不安が原油価格を押し上げている。ロシア・ウクライナ戦争による供給リスクも重なり、原油市場では地政学的な緊張が強まっている。
ベネズエラ政府とPDVSAはコメントを出していないが、外務省は米国の拿捕・阻止行動を「国際法違反」「海賊行為」と非難。中国外務省も今回の米国の動きは国際法に反すると批判している。
一方、米国の制裁を受けない例外として、PDVSAの主要合弁相手であるシェブロンは米当局の許可のもとでベネズエラ産原油の輸出を継続している。シェブロンのタンカーは今月これまでに7回、各30万〜50万バレル規模の積荷を米国メキシコ湾岸へ運んだという。ベネズエラ政府もソーシャルメディアで、シェブロンへの供給は中断していないと報告している。
米沿岸警備隊は制裁関連船舶の阻止を継続しており、先週末にアプローチしていたパナマ船籍のタンカーについては拿捕を見送った。
これらの動きはベネズエラの主要輸出源である石油産業への圧力を一段と強め、同国経済に深刻な影響を及ぼす可能性があるとの見方が出ている。輸出の停滞はベネズエラの歳入減少に直結し、国際社会のエネルギー市場にも広範な波及効果をもたらす恐れがある。
