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アルゼンチン・ミレイ政権と労働組合の対立激化、規制改革案めぐり

ミレイ政権は10日、経済の自由化と雇用促進を掲げる包括的な労働改革案を国会に提出、これに反発する労組が大規模な抗議やデモを計画している。
2025年4月5日/米フロリダ州パームビーチのマー・ア・ラゴ、アルゼンチンのミレイ大統領(AP通信)

アルゼンチンのミレイ(Javier Milei)大統領が推進する労働市場改革をめぐり、政府と労働組合との対立が激化している。ミレイ政権は10日、経済の自由化と雇用促進を掲げる包括的な労働改革案を国会に提出、これに反発する労組が大規模な抗議やデモを計画している。議論は上院での審議段階に入り、労使双方の緊張が高まっている。

改革案は労働市場の「近代化」をうたい、長年にわたる厳格な労働規制を緩和し、企業の雇用負担を軽減することを狙いとしている。具体的には、解雇における訴訟の対象を限定し、賃金補償の支払い義務を抑える仕組みを導入するほか、時間外労働の扱いを柔軟化し、一定時間分を賃金ではなく代休で補う選択肢を認めることが含まれている。また、重要インフラや必須サービスの分野では、ストライキ時に一定比率のサービス維持を義務づけ、従来型の大規模スト戦術を制限することも提案されている。また「非公式雇用」の割合が高い現状を改善し、法人や中小企業への投資を促すことが狙いだと政府側は説明している。

これに対し、主要労組は強い反発を示している。一般労働総同盟(CGT)や州職員協会などの組合は、改革案が労働者の権利を後退させる恐れがあると批判している。労組側は職場での集会開催に雇用主の承認を求める要件などが組合の交渉力を弱体化させると主張し、「労働者の権利を縮小し、組合の影響力を低下させる」と訴えてきた。

労組は議会議事堂前での大規模な抗議行動の実施を計画しており、場合によってはゼネストを含む更なる行動も辞さない姿勢を示している。組合幹部の1人は「政府が我々の要求を受け入れなければ、闘争はエスカレートする」と警告した。

一方で、国内の企業団体や経済界の一部は改革を支持している。高い労働コストと厳格な雇用規制が企業活動を制約し、新規雇用を生みにくいと批判してきた業界は、労働市場の柔軟性向上が投資を呼び込み、経済成長の原動力になるとの見方を示している。ただし、企業側からも改革の効果を十分に引き出すには、賃金税負担の軽減など追加措置が必要だとの意見が出ている。

ミレイ氏は2023年の選挙で選出されて以来、市場重視の政策を唱え、財政赤字の削減や通貨改革などを進めてきた。これまでの財政政策はインフレ抑制や財政収支の改善に一定の効果を上げているが、経済活動の回復は限定的で失業率は依然として高い水準にある。改革案を巡る国会での審議は、ミレイ政権の経済政策全体の成否を左右する重要な局面となる。政府与党は上院での承認に向けて野党中道派議員との調整を図っているが、反対勢力の強さから法案成立の行方は不透明だ。

アルゼンチンの労働組合は歴史的に政治や経済政策に大きな影響力を持ち、対立は輸送網の麻痺や物流の停滞を招く可能性がある。食料輸出大国である同国にとって、こうした混乱は国際貿易にも波紋を広げかねない。政府と労組側の交渉は今後も緊張した展開が続く見込みで、双方の歩み寄りが求められている。

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