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ベネズエラ野党指導者、ノーベル平和賞授賞式に出席できず、独裁政権の弾圧続く

娘による代理受賞であっても、式典で読まれたマチャド氏の声明やスピーチは、世界に向けてベネズエラの現状と、民主主義を求める人民の声を強く訴える内容となった。
2025年12月10日/ノルウェー・オスロ、ノーベル平和賞の授賞式(AP通信)

12月10日、ノルウェー・オスロで開かれたノーベル平和賞の授賞式において、南米ベネズエラの野党指導者マリア・コリナ・マチャド(María Corina Machado)氏の娘が代わりに賞を受け取った。マチャド氏本人は治安上の理由から出席できず、公式に不在扱いとされた。

ノーベル委員会の議長は式典で、「マチャド氏はこの式に出席するためにあらゆる手段を尽くしたが、極めて危険な状況のもとで出席が叶わなかった」と説明。「彼女が安全であることをここで確認でき、またオスロに来てくれることを望む」と語った。

一方でマチャド氏は、ノーベル委員会を通じて音声通話でメッセージを寄せ、「この賞はベネズエラ国民すべてに対するものだ」と述べ、受賞を支援してくれた人々や移民・難民、世界中の同胞に感謝を示した。

授賞式にはアルゼンチン、エクアドル、パラグアイ、パナマなど複数のラテンアメリカ諸国の首脳が出席。ベネズエラ反体制側を支持する各国の連帯が表明された。

マチャド氏は2024年の大統領選挙に際し、当局から立候補を阻まれた。その後も政権への批判や改革要求を続け、民主主義と人権の回復を訴えてきたが、独裁政権の強権的対応により「弾圧・拘束・告発」の危険にさらされていた。2025年1月には首都カラカスで短期間拘束された後、公の場から姿を消し、それ以来行方は公表されていない。

そのため、授賞式への参加は困難であるとして、同氏の出席は断念され、代理人を立てる道が選ばれた。過去にも、受賞者本人が投獄中または国外亡命中で出席できず、家族などが代わりに受け取りに来た例がある。

ノーベル委員会はマチャド氏に対し「ベネズエラにおける民主主義の灯を絶やさず、独裁と人権抑圧に抵抗した功績」を評価し、2025年の平和賞を授与することを決めていた。同氏の主張は暴力ではなく選挙と市民の意思による政権交代、民主制度の復活を求めるものであった。

娘による代理受賞であっても、式典で読まれたマチャド氏の声明やスピーチは、世界に向けてベネズエラの現状と、民主主義を求める人民の声を強く訴える内容となった。

マチャド氏は「自由を待つのではなく、自ら自由になるのだ」と語り、母国のための不断の闘いを約束した。

今回の受賞を受け、ベネズエラ情勢に対する国際的な注目が再び高まっている。複数のラテンアメリカ諸国の首脳が出席したことは、地域における反体制派への支持を象徴するものであり、ベネズエラ国内での政権批判や市民の抵抗運動に対する抑圧に対して、国際社会からの圧力が強まる可能性を示唆する。

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