国際刑事裁判所、米国の対ベネズエラ制裁に関する調査打ち切り
調査は2020年、ベネズエラ政府の要請によって始まった。
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国際刑事裁判所(ICC)は12日、米国がベネズエラに科した制裁が「人道に対する罪」に当たるかどうかを調べていた予備調査を終了すると発表した。証拠を検討した結果、刑事責任を問うための証拠が不十分だと判断したためである。
調査は2020年、ベネズエラ政府の要請によって始まった。当時のマドゥロ政権は米国が実施した資産凍結や渡航禁止などの制裁を「違法な強制措置」と呼び、これが国内で深刻な苦難を引き起こしたとしてICCに調査を求めていた。ベネズエラ側は制裁によって経済や医療体制が打撃を受け、多くの市民が影響を受けたと主張していた。
しかしICCは調査の結果、制裁がベネズエラの厳しい人道状況を悪化させた可能性は広く認められているとしながらも、それが「人道に対する罪」に該当することを立証するには十分ではないと結論付けた。特に、民間人に苦痛を与えることを意図していたという証拠が確認できなかったと説明している。
今回の決定により、米国の制裁をめぐるICCの刑事調査は打ち切られることになる。ただし、この判断はベネズエラで起きた他の事件とは別の問題で、治安部隊による人権侵害疑惑については引き続き調査が続けられている。2017年の反政府デモ弾圧をめぐり、ベネズエラ当局が市民に対して犯罪行為を行った可能性があるとして、ICCは本格的な捜査を進めている。
一方、この問題をめぐる司法手続きには複雑な事情もある。ICCのカーン(Karim Khan)主任検察官はベネズエラ事件に関連して利益相反の可能性が指摘され、控訴裁判所の判断でこの案件から外れるよう命じられた。カーン氏の義理の妹がベネズエラ政府側の弁護団に参加していたためである。さらに同氏は現在、セクハラ疑惑に関する調査のため、職務を一時的に離れている。
今回の発表はベネズエラ情勢が大きく揺れる中で行われた。ICCは調査終了の決定が2026年1月に起きた事案とは無関係であると強調している。この事件では米軍がマドゥロ(Nicolas Maduro)前大統領と妻を軍事作戦で拘束・米ニューヨークへ移送した。
ICCは同じ発表の中で、別の案件としてベラルーシ政府による人道に対する罪の疑いについては捜査を進める方針も明らかにした。リトアニアの要請に基づき、ルカシェンコ政権に批判的な人物が国外へ強制的に追放された疑いなどが調べられる見通しである。
米国の制裁をめぐる調査は終了することになったが、ベネズエラ国内の人権問題や政治的対立をめぐる国際的な議論は今後も続くとみられる。ICCの判断は経済制裁と国際刑事法の関係をめぐる議論にも影響を与える可能性がある。
