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ブラジル大統領、アマゾンの河川計画に関する大統領令を撤回

抗議デモはパラ州サンタレンにある米穀物商社「カーギル(Cargill)」の港湾施設の占拠で一段と激しさを増した。
ブラジルのアマゾン、先住民族の酋長(Getty Images/AFP通信)

ブラジルのルラ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領は23日、アマゾン流域の河川の民間委託を容認する政令(第12,600号)を撤回すると発表した。これは先住民らによる約33日間に及ぶ抗議デモを受けての措置で、アマゾンの主要河川であるタパジョス川などの開発計画に反対する住民の声が政府決定を翻させた形となった。

当該政令は2025年8月に署名され、河川・水路の維持管理や浚渫(しゅんせつ)、船舶交通の管理を民間企業に委ねることを認める内容だった。政府はこれを物流・輸出効率の向上を目的としたインフラ整備の一環と位置付けたが、先住民団体や環境保護団体が「アマゾンの生態系や伝統的生活を脅かす」と強く反発していた。

抗議デモはパラ州サンタレンにある米穀物商社「カーギル(Cargill)」の港湾施設の占拠で一段と激しさを増した。先住民団体は同地で数週間にわたり施設を封鎖し続け、最終的に港湾ターミナル内部まで占拠した。これによりカーギルの操業は一時停止し、地域の物流にも影響が及んだ。

抗議を主導した団体は政令が住民の同意なく進められたと批判。国際労働機関(ILO)第169号条約に基づくこの権利は、ブラジルが批准しているにもかかわらず軽視されたと指摘していた。

先住民族の酋長は23日、TVグローボの取材に対し、「これは抵抗の勝利、川と森の命の勝利である」と語った。また、抗議中に多くの家族や女性、子どもたちが港湾施設の占拠を続けたことに言及し、「戦いはこれで終わりではなく、今後も住民の意見が尊重される政策を求めて活動を続ける」と強調した。

政府側は抗議の激化を受けて協議を重ね、住民代表と首都ブラジリアで会談した結果、政令撤回の方針を固めたと説明している。大統領府の報道官はX(旧ツイッター)への投稿で、「政府は市民の声に耳を傾け、必要なら今回のように決定を見直す」と述べた。撤回決定は近日中に官報に掲載される見込みだという。

先住民らは抗議デモを通じて国内外の注目を集め、最大都市サンパウロなどでも連帯集会が開かれた。これにより、アマゾンの環境保護と先住民の権利が国内政治の重要な争点となっていることが浮き彫りになった。撤回決定はルラ政権にとって“調整”となったが、今後のインフラ開発と環境保全のバランスをどう取るかが課題として残る。

今回の動きはブラジル国内で大規模農業や物流インフラを巡る利害と、先住民や環境保護の要求がどう衝突し調整されるかを示す最新の事例となっている。

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