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ブラジル史上最悪の警察摘発が血の惨劇に変貌した経緯

この作戦は治安当局が犯罪組織CV(赤コマンド)に打撃を与える意図で計画されたが、結果として警察側も多数の犠牲者を出し、戦術や情報管理の欠陥が致命的な結果を招いたとみられる。
2025年10月28日/ブラジル、リオデジャネイロ郊外のスラム街、治安部隊とギャングの構成員(AP通信)

10月28日未明、ブラジル・リオデジャネイロ北部のスラム街を対象とする警察の大規模摘発が行われ、120人以上の死者を出す血の惨劇に発展した。この作戦は治安当局が犯罪組織CV(赤コマンド)に打撃を与える意図で計画されたが、結果として警察側も多数の犠牲者を出し、戦術や情報管理の欠陥が致命的な結果を招いたとみられる。

作戦は午前0時すぎ、警察官が約20人の武装集団と遭遇したことをきっかけに始まった。逃走する武装者を追う最中、武装集団側から発砲があり、銃撃戦に発展した。現場にいた関係者の報告によると、警察の計画が事前に漏れていた可能性があり、武装集団が待ち構える形になっていたとの証言もある。

午前4時ごろには数十台の装甲車両と警察車両が投入され、1100人以上の警察官が突入したが、地形の複雑さや準備不足が災いし、武装集団の激しい抵抗を受けた。当初の目的は組織の指導者逮捕と武器・麻薬の押収であったが、警察は丘陵地帯の高台に潜む武装兵に狙われ、待ち伏せ攻撃を受ける形となった。

警察内部の証言では、計画段階で天候不良による作戦延期が繰り返されたことが影響し、情報が漏洩した疑いが指摘されている。また、大規模な人員と装備を投入したにもかかわらず、驚異的な抵抗を受け、救援に向かった部隊が別の待ち伏せに遭うなどしたという。

作戦中、警察隊はヘリコプターやドローンからの情報も活用したが、武装集団はタイヤや車を燃やして道路を封鎖し、煙で視界を奪いながら巧妙に戦闘位置を変更するなど、ゲリラ戦術を展開した。警察内部でも装備不足や連携の不備が見られ、優位性を失ったまま長時間の銃撃戦となった。

結果として、この日一日で少なくとも121人が死亡し、その大半は武装勢力関係者とされるが、独立機関の数値では死者数は132人に上るとされている。警察側も少なくとも5人が死亡したほか、多数の負傷者を出した。死亡者の中には一般市民の可能性が指摘されるケースもあり、現地の住民や人権団体からは過度な武力行使と情報管理の欠如に対する批判が強まっている。

リオデジャネイロ州の治安当局は作戦を「成功」と評価し、組織犯罪への強い姿勢を示すものであったと主張する一方、批評家らは計画と実行に深刻な欠陥があったと指摘している。特に、警察が全工程を通じて十分な準備や緊急対応体制を整えていたかどうかが問われている。

住民らは銃撃戦の恐怖と家族・知人の安否不明に苦しみ、遺体を自ら回収するなど混乱の中で夜を明かした。この事件はブラジル社会における治安対策の根本的な見直しを迫る事態となっており、犠牲の大きさとその背景にある制度や戦術の問題が国内外で議論を呼んでいる。

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