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EUとメルコスールが自由貿易協定に署名、交渉期間25年

この協定はEUとメルコスールとの貿易関係を一段と強化するもので、双方合わせて人口約7億人、世界全体の国内総生産(GDP)の約4分の1を占める巨大な市場を形成する。
2026年1月17日/パラグアイ、首都アスンシオン、EU・メルスコール自由貿易協定の署名式(AP通信)

EUと南米南部共同市場(メルコスール:アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)は17日、パラグアイの首都アスンシオンで自由貿易協定に正式に署名した。25年以上にわたって難航した交渉がようやく実を結び、世界最大級の自由貿易圏が誕生することになった。署名式には欧州委員会のフォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長や欧州理事会のコスタ(Antonio Costa)常任議長のほか、メルコスール各国の首脳や閣僚が出席した。

この協定はEUとメルコスールとの貿易関係を一段と強化するもので、双方合わせて人口約7億人、世界全体の国内総生産(GDP)の約4分の1を占める巨大な市場を形成する。協定は商品・サービス間の関税の90%以上を撤廃し、段階的に関税を引き下げる内容となっている。ただし、牛肉など敏感な農産物については厳格な輸入割当(クオータ)が設定され、EU側の農家への補助金や安全策と組み合わせる形で欧州農業界の懸念に対応する措置も盛り込まれている。

フォンデアライエン氏は署名式で「この協定の地政学的重要性は計り知れない」と述べ、保護主義の台頭や世界的な貿易緊張が高まる中で、公正な貿易と長期的なパートナーシップを選択したと強調した。また、欧州と南米がこれまで以上に協力し、両地域の繁栄を目指す意志を示した。

この大型協定は地理的に豊かな資源を持つ地域同士の結びつきを深め、輸出入の拡大を通じて経済成長を後押しする狙いがある。EUは自動車や機械、化学製品をはじめとする工業製品の新たな市場を獲得し、メルコスール側は農産物や食料品など南米の主要輸出品の欧州市場へのアクセスが拡大することが期待される。

しかし、この協定は直ちに発効するわけではない。今後、欧州議会による批准とメルコスール加盟国各国の立法機関での承認が必要となる。特に欧州側では農業団体や環境保護団体から反対の声が根強く、批准過程での障害となる可能性が指摘されている。フランスなど一部のEU加盟国は未だ協定に反対しており、欧州議会での最終承認を巡る議論は依然として困難なものとなっている。

また、世界の主要貿易相手である米国や中国との関係も、この協定に影響を与えている。現在の国際貿易環境は関税や保護主義の圧力が強まる中で変動しており、EUとメルコスールが独自に経済圏を強化することで、他の主要大国とのバランスにも変化が生じる可能性がある。

専門家は今回の協定について、単なる貿易促進だけでなく、EUとメルコスール双方が国際的な経済・政治の流れの中で戦略的な連携を深める重要な一歩と評価している。一方で、環境保護や農業基準の違いをどのように調整し、社会的な利益を両地域で公平に分配するかといった課題も依然として残されている。今後の批准手続きの行方が注目される。

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