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EU・メルコスール自由貿易協定、米国への不信感で締結加速

この貿易協定はEUとメルコスール諸国――ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ――の間で結ばれ、巨額の市場を結びつけるものとなる。
2026年1月8日/フランス、パリ、EU・メルスコール自由貿易協定の交渉に抗議するデモ(ロイター通信)

EUと南米南部共同市場(メルコスール)との間で自由貿易協定が暫定的に成立したことは、米国のトランプ政権が展開してきた「強硬外交」の限界を示すものとして受け止められている。関係筋や専門家は、今回の貿易協定が米国の影響力低下を象徴すると同時に、地域諸国が多国間主義や多元的パートナーシップを追求している現れだと分析している。

この貿易協定はEUとメルコスール諸国――ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ――の間で結ばれ、巨額の市場を結びつけるものとなる。これにより、EUと南米の経済関係は大幅に強化される見込みだ。交渉は1990年代後半に始まり、多くの障壁を乗り越えて合意に達したが、近年の国際情勢の変化がその進展を促した側面もあるとされる。

トランプ政権は関税引き上げや政治的圧力を通じて地域諸国に対する影響力を強化しようとした。政権内では、米国の覇権を西半球で再確立することが外交の重点とされ、多くの政策が実施された。しかし、専門家はこれらの強硬策がかえって国際的な反発や離反を招き、EU・メルスコールの協定締結を促進したとの見方を示している。ある専門家は「この協定はトランプ(Donald Trump)大統領の関税戦争やウクライナ情勢、ベネズエラでの出来事など国際情勢が背景にある」と指摘する。

トランプ氏自身はラテンアメリカ諸国に米国への忠誠を求め、政治的影響力の強化を試みてきた。またベネズエラ大統領の拘束作戦を支持し、ホンジュラスやアルゼンチンの選挙に対しても圧力をかけるなど、様々な外交手段を用いた。ブラジル製品への高関税も導入し、ルラ政権にボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領への法的措置を停止させようとしたが、ボルソナロ氏は後に実刑判決を受け、米国は多くの関税を撤回した。

こうした米国の外交戦略について、ホワイトハウス報道官は「トランプ政権の外交政策は米国の力を回復させた」と評価する声明を出す一方で、ラテンアメリカ諸国の大部分はEUや中国との経済関係強化を優先している。貿易の面では中国が近年急速に存在感を高め、南米諸国の主要貿易相手国となっており、米国の影響力が相対的に低下していることが示されている。

今回の協定は、単にEUとメルコスールの貿易を拡大するだけではなく、その他の地域や国との新たな協定締結につながる可能性もある。関係者によると、カナダやアラブ首長国連邦(UAE)などとの貿易協定交渉も進む可能性があり、ラテンアメリカ諸国は多様な国際パートナーと経済的な結びつきを深める方向へ動き出しているという。

一部の専門家は、米国が国際的なルールや多国間主義から距離を置く姿勢が逆に他国の結束を強め、結果として貿易協定の締結を加速させたと分析する。「多くの国が世界的な基準を強化したいと考えている時に、米国は現状を壊している」と指摘されており、これは米国外交の再考を促す「警鐘」だとみられている。

EU・メルコスール協定は欧州議会での承認手続きなどの課題を残しているが、域内外の貿易を巡る地政学的なパワーバランスが変化していることを象徴する出来事となった。今回の合意はラテンアメリカが米国一辺倒の関係から脱し、多国間・多極的な国際関係を追求する姿勢を反映しているといえる。

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