エンブラエル、2028年に年間100機の民間ジェット機納入目指す
エンブラエルはブラジルを代表する航空機メーカーであり、世界有数の中型旅客機・ビジネスジェットメーカーとして知られている。
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ブラジルの航空機メーカーであるエンブラエル社は2028年までに年間100機の民間航空機納入を達成する見込みである。同社のCEOが11日、明らかにした。
同社はパンデミックによる業界危機からの回復策の一環として、2021年以降年間納入数を増加させてきた。今年は24年の73機からさらに積み増し、77~85機の民間ジェット機納入を見込んでいる。
ネト(Francisco Gomes Neto)CEOは以前、サプライチェーンの障害がエンブラエルの生産計画を制限していると警告していた。同社が年間100機の民間ジェット機納入を達成したのは2017年が最後である。
ネト氏はロイター通信のインタビューで、「2026年は民間ジェット機の生産において依然として厳しい年になる」と語った。
またネト氏は「2027年から強力な成長計画を再開し、2028年には年間100機の民間航空機生産を達成する見込みだ」と述べる一方、「サプライチェーンの問題により、この目標を早期に達成するのは難しい」と付け加えた。
エンブラエルはブラジルを代表する航空機メーカーであり、世界有数の中型旅客機・ビジネスジェットメーカーとして知られている。
1969年に国営企業として設立され、当初は軍用機や国内輸送向けの小型機の開発を中心に活動を開始した。その後、民営化や国際的な資本導入を経て成長を遂げ、現在では民間航空、ビジネス航空、防衛航空の三部門を柱とする多角的な企業へと発展している。
民間航空機分野では特に100席以下のリージョナルジェット機市場で強い競争力を持っている。代表的な機種「ERJシリーズ」や「E-Jetシリーズ」は、世界各地の地域航空会社に採用され、短距離・中距離路線の効率的な運航を可能にしてきた。2004年に導入されたE-Jetシリーズは快適性や燃費効率の高さで評価され、米国や欧州をはじめ世界の主要航空市場で広く利用されている。近年は改良型「E2シリーズ」を投入し、燃費性能の改善と環境対応を進めている。
ビジネスジェット分野でも、エンブラエルは「フェノム」や「レガシー」「プレトーリアン」などの機種で存在感を示している。これらは中小規模のビジネス機市場で評価が高く、米国市場を中心にシェアを拡大している。高性能かつコスト効率の良さを強みに、北米や欧州の富裕層や企業需要を取り込み、グローバルな競争の中で確固たる地位を築いている。
防衛航空分野では、輸送機「C-390ミレニアム」や軽攻撃機「スーパーツカノ(A-29)」が代表的である。特にスーパーツカノは南米やアフリカ諸国を中心に採用され、低コストかつ実用性の高い対反乱作戦用航空機として評価されている。また、ブラジル空軍との緊密な関係を背景に、軍事技術の開発・輸出を通じて国際的な影響力を持つようになった。
エンブラエルは一時期、米ボーイング社との提携や買収交渉を進めたが、2020年に最終的に破談となった。これにより独立系メーカーとしての道を歩み続けているが、世界の航空機産業においてエアバスとボーイングが支配的である中で、エンブラエルは「第三の勢力」として中規模市場を確保している。その存在は新興国発の航空機メーカーとしては稀有であり、ブラジルの産業技術力を象徴する存在ともいえる。
エンブラエルは規模こそ欧米の巨大航空機メーカーに及ばないものの、独自の市場ニッチを確立し、民間・ビジネス・防衛の各分野で着実に国際的地位を固めている。今後は環境規制や航空需要の変動に対応しつつ、持続可能な航空技術を取り込んでさらなる成長を図ることが課題となる。