エクアドル当局、武装組織の資産460億円差し押さえ
捜査当局はギャングが保有する複数の不動産を一斉に捜索した。
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エクアドル内務省は9日、数百人規模の警察部隊が武装ギャングの不動産を家宅捜索し、3億1300万ドル(約461億円)相当の資産を差し押さえたと発表した。
それによると、捜査当局はギャングが保有する複数の不動産を一斉に捜索したという。
内務省は声明で、「この組織は麻薬密売に関連する違法活動から得た巨額の資金を国内金融システムに流入させていた」と説明した。
ノボア(Daniel Noboa)大統領はX(旧ツイッター)への投稿で捜査当局の摘発を称賛した。
エクアドルでは近年、殺人件数が劇的に増加し、治安情勢が深刻な危機に陥っている。
2023年の殺人件数は8000件を超え、記録が残る70年間で最多となった。殺人率は2022年の約27件/10万人から2023年には44~45件/10万人へと急上昇し、ラテンアメリカでも最も高い水準となった。
特に、2025年前半は暴力がさらに悪化し、1~7月の殺人は前年同期比で40.4%増の5268件に達し、過去10年で最も暴力的な期間となった。
背景には麻薬密輸に関わるギャング間の縄張り争いがある。
エクアドルはコロンビアとチリ間の戦略的な輸送ルート上に位置し、麻薬組織が港湾都市を拠点に操業している。ロス・チョネロス(Los Choneros)やロボス(Los Lobos)をはじめとするギャングがコロンビア、メキシコ、アルバニアの麻薬カルテルと連携し、惨劇的な殺戮や爆破、拷問、政治家やジャーナリストへの暴力を伴う殺人を頻発させている。
さらに、児童・青少年の殺害が急増しており、2023年には770人が犠牲となり、2019年の104人から約640%増という衝撃的な数字となっている。
この異常な増加は、武装集団による少年少女の強制徴用や教育・医療施設への脅威とも結びつき、社会的インフラへの影響も深刻だ。
政府はこれに対応すべく、国家の治安戦略を強化している。2024年1月に「内部武力衝突」を宣言し、22の犯罪組織をテロリストと位置付け、軍隊を街へ展開したほか、夜間外出禁止令や州非常事態宣言を導入した。
また、ロス・チョネロスのリーダー「フィト」を米国に引き渡すなど、国際協力も強化している。
しかし挑発的な対策にもかかわらず、暴力は収まる気配を見せない。2025年にはドゥランが世界で最も殺人が多い都市にまでなり、地方の農村部でもバルや闘鶏場への襲撃、多数死傷事件(例:7月に17人が死亡する虐殺事件や4月に12人が殺害される襲撃が発生)が相次いでいる。
このような情勢は一般市民の移動や教育、日常生活を直撃しており、内部避難者も8万人以上にのぼるとされる。
エクアドルは数年前まで見られなかった麻薬組織による組織的暴力と治安崩壊の渦中にあり、都市部だけでなく農村部にも安全の崩壊が広がっている。
政府の治安強化策は一定の成果や国際支援を得つつあるが、構造的な社会問題や司法・治安機関の脆弱性が残っており、長期的かつ包括的な対策が不可欠な段階にある。