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エクアドル南部の刑務所でギャング間抗争、14人死亡、14人負傷

エクアドルでは近年、刑務所でこのような暴動が頻発し、数百人の受刑者が死亡している。
2022年11月1日/エクアドル、グアヤキルの刑務所(AFP通信/Getty Images)

エクアドル南部の刑務所でギャング間抗争が発生し、14人が死亡、14人が負傷した。地元警察が22日、明らかにした。

それによると、事件は港湾都市グアヤキル近郊の刑務所で発生。受刑者たちが当局と対峙し、刑務官1人を殺害した後、職員を一時拘束したという。

地元テレビ局は警察筋の話しとして、「ギャング間抗争が激化し、手榴弾や爆弾攻撃も確認された」と伝えている。

報道によると、暴動に乗じて一部の受刑者が脱走したものの、これまでに13人が逮捕されたという。

機動隊が刑務所に突入し、約40分後に支配権を取り戻した。

エクアドルでは近年、刑務所でこのような暴動が頻発し、数百人の受刑者が死亡している。

エクアドルの刑務所でギャング間抗争が頻発している背景には複数の要因が絡み合っている。最大の要因は、国内外の麻薬取引を巡る権益争いである。エクアドルはコロンビアとペルーという世界有数のコカイン生産国に隣接しており、直接生産は少ないが主要な輸送ルートとして重要な位置を占めている。特に太平洋岸のグアヤキルなどは欧州へ向かうコカインの出荷拠点となり、その輸送経路を巡って国内ギャング組織が激しく対立している。

刑務所内部では、こうした麻薬組織の下部構造がそのまま持ち込まれており、各勢力が縄張りを形成している。代表的な勢力として「ロス・チョネロス」「ロス・ティグリロス」「ロス・ラゴス」などが存在し、それぞれが外部の麻薬カルテル、特にメキシコのシナロア・カルテルやハリスコ新世代カルテル(CJNG)と結びついている。これらの国際的ネットワークは、刑務所を単なる収監施設ではなく、指揮命令や資金流通の拠点として活用しており、抗争の激化を招いている。

さらに、エクアドルの刑務所システム自体の脆弱さも大きな要因である。収容人数は慢性的に定員を超過し、2020年代に入る頃には収容率が130%を超えることもあった。警備体制は不十分で、看守の数は受刑者に比べて圧倒的に少なく、しばしば収容者側が実質的に刑務所を支配している状況にある。武器や携帯電話、麻薬が内部に持ち込まれるのも容易であり、抗争が発生すれば短時間で大規模な流血に発展する。実際、2021年以降の数年間で数百人規模の受刑者が抗争で死亡する事態が繰り返され、国際社会からも「人道的危機」として懸念されている。

また、政府の対応にも限界がある。エクアドルは治安部隊の人員や予算が不足しており、刑務所の管理強化や抗争鎮圧に十分なリソースを割けない。大規模な抗争が発生するたびに非常事態宣言を発令し軍を投入するが、根本的な解決には至っていない。むしろ強権的な鎮圧が一時的な権力の空白を生み、新たな勢力争いを誘発することもある。

さらに、貧困と社会的不平等も背景として無視できない。エクアドルの若年層失業率は高く、都市部の貧困地域では麻薬組織がリクルート活動を活発に行っている。その結果、ギャングは単なる犯罪集団ではなく地域社会に根を下ろした存在となり、刑務所に収監されてもそのネットワークが維持される。刑務所は「ギャングの大学」と化し、構成員が育成され、勢力が拡大していく悪循環が生まれている。

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