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エクアドルで反政府デモ激化、ノボア大統領に試練

政府は全国10州に非常事態宣言を発令中。燃料補助金の廃止に乗じて、反体制派やギャングが暴動を企てていると非難している。
2025年9月28日/エクアドル、首都キト北部のアンデス地域、燃料補助金の廃止に抗議するデモ隊(AP通信)

南米エクアドルでノボア(Daniel Noboa)大統領の政策に抗議するデモが続いている。

政府は全国10州に非常事態宣言を発令中。燃料補助金の廃止に乗じて、反体制派やギャングが暴動を企てていると非難している。

ノボア氏は9月12日にディーゼル燃料に対する補助金廃止を指示。その後、これに反対する先住民族グループなどがデモを開始した。

北部地域のデモは9日で18日目の突入。対話の兆しが見えない中、これまでに抗議者1人が死亡、多数の抗議者と警察官が負傷し、100人以上が逮捕された。

一部の専門家はノボア氏が右傾化し、対話の姿勢が欠けていると指摘。一方で、一部の過激な先住民族や左派勢力が武力による政権転覆を企て、混乱に拍車をかけていると懸念を示している。

政府は8日、ノボア氏を乗せた車に石を投げつけたとして、5人の容疑者が暗殺未遂で逮捕されたと明らかにした。

事件はキト郊外の町で7日に発生。ソーシャルメディアで共有された動画には、ノボア氏を乗せた車に石やコンクリート片を投げつけるデモ参加者の姿が映っていた。ノボア氏にケガはなかった。

政府はこれを暗殺未遂と非難。5000人の兵士を投入し、暴力的なデモを取り締まると警告した。

しかし、先住民族グループは政府の主張を否定。抗議デモは平和的に行われており、投石攻撃は「政府の自作自演」と主張した。

エクアドルで右派と左派の分断が進んでいる理由は、経済政策と治安対策をめぐる対立にある。左派は伝統的に貧困層や先住民の権利擁護、公共支出の拡大を重視し、コレア政権時代には石油収入をもとに社会福祉政策を拡充した。

しかし、その後の経済低迷や汚職疑惑により左派への不信感が高まり、緊縮財政や市場開放を掲げる右派が台頭した。一方で、右派政権は治安対策や経済自由化を優先するが、貧困層への支援が不十分との批判も強く、治安悪化とギャングの暴力が深刻化する中で社会の不満が高まっている。

特に都市部と農村部、富裕層と貧困層の間で政治的意見が大きく分かれ、政権交代のたびに政策が大きく変動する不安定さも分断を深めている。こうした背景により、左右両派の支持者間で対立が激化し、国民の政治的不信感が増している。

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