エクアドル少年4人殺害、軍兵士11人に実刑判決
2024年12月8日、グアヤキルの貧困地区でサッカーをしていた11歳から15歳の少年4人が空軍兵士に拘束された後、行方が分からなくなった。
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エクアドルの裁判所は22日、昨年12月にグアヤキルで少年4人を殺害したとして、11人の軍兵士に対しそれぞれ34年以上の禁錮刑を言い渡した。判決は治安維持を名目に実施された軍の作戦中に発生した重大な人権侵害事件を巡る司法の対応として注目を集めている。
2024年12月8日、グアヤキルの貧困地区でサッカーをしていた11歳から15歳の少年4人が空軍兵士に拘束された後、行方が分からなくなった。その後、少年たちは郊外の地区で遺体で発見された。検視では死亡前に身体的暴行を受けた痕跡が確認され、司法当局は殺人事件として捜査を続けた。
裁判では目撃証言が重要な役割を果たした。証言によると、少年たちは拘束後に殴打され、衣服を剥ぎ取られたうえで夜間に人里離れた場所に連れ出されたという。兵士側は証拠不十分や訓練不足を主張したが、裁判所は証言と他の物的証拠を重く見て有罪判決を下した。
11人の兵士には34年以上の禁錮刑が科された。 また、検察に協力したとして5人の兵士には2年半の刑が言い渡された一方、1人の中佐は証拠不十分で無罪放免となった。
この事件はエクアドル国内で進められている強硬な治安対策の象徴的な出来事となった。ノボア(Daniel Noboa)大統領は組織犯罪対策の一環として軍を治安任務に動員しているが、軍の関与による人権侵害が重大な社会問題となっている。 人権団体は治安戦略が市民の安全を守るどころか、無実の市民を危険にさらしていると批判している。
事件発覚後、国内では抗議集会が各地で開かれ、家族や市民が司法の徹底した調査と責任者の処罰を求めた。遺族は裁判後の声明で、「子どもたちはただサッカーをしていただけだ。軍が彼らを拘束しなければ、この悲劇は起きなかった」と述べ、政府の治安政策への強い不満を表明した。
国際的にも注目を集めたこの事件はエクアドルが軍の治安活動と人権保障のバランスをどのように取っていくかという課題を浮き彫りにしている。軍の関与が拡大する治安政策の中で、市民の基本的人権を守る法的・制度的枠組みを強化する必要性が改めて問われている。
一方で、同国では別の地域でも軍によるとされる超法規的な殺人事件に関して6人の兵士が起訴されるなど、治安部隊の責任を問う司法手続きが複数進行中である。今後も軍と治安政策に関する議論が続く見通しだ。
