アルゼンチン首都で独裁政権時代の軍将校が集会、政治的変化の兆し
この集会は当時の人権侵害で投獄された同僚の釈放などを求めるもので、独裁政権時代の「国家暴力」をめぐる国の長年のコンセンサスに異議を唱えるものとみられている。
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アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで29日、1976年から1983年の軍事独裁期に軍務に就いていた元軍人らとその支持者らによる異例の街頭集会が行われた。
この集会は当時の人権侵害で投獄された同僚の釈放などを求めるもので、独裁政権時代の「国家暴力」をめぐる国の長年のコンセンサスに異議を唱えるものとみられている。
このデモはかつて多数の拉致・失踪事件の犠牲者を探し求めてきた市民団体が毎週行進を行っていた広場で実施された。この行進は独裁政権の再来を許さないという国の合言葉「Nunca Más(二度と)」の象徴とされてきた。そうした歴史的聖地での軍人らの集会は、多くの人権活動家や反対派から「歴史の歪曲」や「国家テロの正当化」の試みだとして強い反発を招いた。
今回の動きは現政権下で進む政治・社会の変化の一端とみられている。右派のミレイ(Javier Milei)大統領は独裁政権時代の国家の暴力を「左翼ゲリラとの戦争の一環」と位置づける発言を繰り返してきた。
副大統領も軍人擁護の姿勢で知られ、「左翼の犠牲者」への補償を訴えるなど、過去の清算に異議を唱えてきた。
さらに先週、ミレイ政権は民主化後初めて、現役の軍高官を国防相に任命した。この動きは軍の再評価を進める明確なシグナルと受け止められている。政府側は「軍人への”悪の烙印”を終わらせる教訓」だと説明している。
集会に参加した支持者たちは、国家権力によって蔑視されてきたとの不満を口にし、「投獄された同僚の道徳的名誉回復」を求めた。「我々はテロリストを倒した」と誇る声もあがったという。
一方、集会に対抗して市民や人権団体から反対の声も上がった。失踪被害者の親族の男性は、「大量虐殺の加害者が政府の庇護の下でここに立っていることに恐怖を感じる」と述べ、集会を強く非難した。
この集会が行われた背景には、国際的にも指摘される政府による「記憶」と「正義」のための制度の後退や、軍事費増大といった政策の転換がある。特に国連の対拷問委員会などは、独裁期の犯罪を検証してきた過去の制度の解体、被害者支援や補償の透明性低下を懸念している。
