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ブラジルの犯罪組織「CV(赤コマンド)」とは

CV(Comando Vermelho)は刑務所内での結束から始まり、ファヴェーラやアマゾン地域まで拡大を遂げた「準国家的」犯罪組織である。
2025年10月28日/ブラジル、リオデジャネイロ郊外のスラム街、治安部隊とギャングの構成員(AP通信)
起源・発展

CV(赤コマンド)の起源はブラジルが軍事独裁政権(1964–1985)下にあった時期、リオデジャネイロ州の島嶼部にある刑務所、イリャ・グランデ(Instituto Penal Cândido Mendes)に収監されていた一般犯罪者と左派ゲリラ出身の政治犯との連帯から始まった。
1979年以降、その囚人たちが「Comando Vermelho」という名を採り、刑務所内外で自己防衛を目的とした集団を形成し、脱獄・暴動・金品略奪などを通じて力を得ていった。
1980年代に入ると、CVはリオのファヴェーラ(低所得者居住区)などに進出し、コカイン流通や武器取引といった大規模な犯罪活動に関与し始めた。特にコロンビアの麻薬カルテルとの関係も指摘されており、リオ州の麻薬取引市場の大部分を掌握した時期もあった。


組織構造・勢力範囲

CVの構造は典型的な階層型マフィアというよりも「分散型・ネットワーク型」に近い。刑務所内から外部に展開し、各ファヴェーラ、各州、さらには国境地帯にまで影響を及ぼしている。
2020年代初頭の時点で、メンバー数は約3万人と推定されており、リオ州以外にもアマゾナス州やマトグロッソ州など北部・西部の奥地にも活動を拡大している。
また、ブラジル国外、例えばボリビア・パラグアイとの国境地帯を軸にコカインの流通ルートへ参入しており、麻薬・武器・資金の国際的な移動にも関与している。


主な犯罪活動

CVは以下のような多様な犯罪を行っている:

  • 麻薬取引:コカインの輸入/流通から販売までを内外で展開。

  • 武器・重火器の取引:密輸された銃器・爆発物を使用し、警察・ライバル組織との衝突も激しい。

  • 恐喝・略奪・誘拐・強盗:支配地域の住民から保護料を取る、偽装公共サービスを通じて利益を得るなど、準国家的な支配を行う。

  • 非合法経済/公共サービスの支配:例えば交通アプリを使った収益化、インターネットやスマホ回線の支配、ファヴェーラ内での「自治」機能など。


社会的・安全保障上の影響

リオデジャネイロのファヴェーラでは、CVが実質的な支配権をもって住民の生活に介入し、住民は警察ではなく「ファクション(ギャング)」のルール下に置かれることも少なくない。
また、アマゾン地域などでは、麻薬ルート・違法伐採・鉱山採掘・密輸活動と結びつき、環境破壊・先住民族の土地侵害・法の不在地帯化といった複合的な影響を生んでいる。
さらに、CVとライバル組織、PCC(首都第一コマンド)などとの「縄張り争い」が激化し、刑務所暴動や都市部の銃撃戦を含む大量死事件が発生している。


課題・展望

CVをめぐる課題としては以下が挙げられる:

  • 法執行と司法の困難:ファヴェーラ、アマゾン奥地、刑務所という「法の届きにくい場所」で活動しており、警察・司法機関の介入が困難。

  • 社会構造的背景:貧困、教育格差、若年失業、黒人・アフロ系住民の社会的排除といった問題が、若者がギャングに加入する構造を生んでいる。

  • グローバル化・多角化する犯罪:麻薬流通ルートの多様化、武器の国際密輸、非法経済との結びつき、環境・先住民族問題とのリンクが強まり、従来型の「犯罪対策」では対応が難しい。

  • 国家の統治空白:特にリオ郊外・山岳地・北部奥地では、国家が支配できていない地域が存在し、CVなどが影響力を拡大している。

  • 改革・対策の必要性:従来の「強硬取締り」だけでは臨界点に達した暴力・無法状態を抑えきれず、住民参加・社会的包摂・代替経済支援・地域統治強化といった多面的アプローチが求められている。


まとめ

CV(Comando Vermelho)は刑務所内での結束から始まり、ファヴェーラやアマゾン地域まで拡大を遂げた「準国家的」犯罪組織である。麻薬・武器・恐喝・違法経済に深く関与し、ブラジルの社会・治安・環境・ガバナンスに甚大な影響を与えている。単なる「暴力集団」ではなく、地域住民の生活や非合法市場の中で一定の統治機能を果たす一方で、法と社会のルールを破壊し続ける存在である。今後、ブラジル社会・政府がこの組織にどう対峙し、法の支配・社会的包摂・地域開発を実現していくかが大きな課題となる。

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