◎有権者は第1回投票で暴力・不平等・インフレに対処してくれるであろう候補者を選び、二人のアウトサイダーが決選投票に進んだ。
南米コロンビアで19日、大統領選決選投票が行われ、元左翼ゲリラのペトロ(Gustavo Petro)氏が極右の実業家エルナンデス(Rodolfo Hernandez)氏を大接戦の末破り、勝利を宣言した。
選挙管理当局によると、集計はほぼ終了し、ペトロ氏が50.47%、エルナンデス氏が47.27%を獲得したという。
ペトロ氏は反政府ゲリラ「4月19日運動(M-19)」の元戦闘員で、コロンビア内戦の終結に向けた取り組みを加速させ、富裕層への課税を強化し、中小企業を支援し、国民の生活に寄り添う政府を形成すると公約に掲げ、支持を集めた。
M-19は1990年に武装解除し、「M-19民主同盟」に生まれ変わった。ペトロ氏はM-19との関りを理由に投獄され、その後恩赦を受けている。
ペトロ氏はツイッターに、「今日は祝賀の日だ。民衆の勝利を祝おう」と投稿した。
首都ボゴタにあるペトロ氏の選挙事務所本部には「Gracias Colombia(ありがとうコロンビア)」というメッセージが表示された。
エルナンデス氏は敗北を認め、保守派のドゥケ(Ivan Duque)大統領はペトロ氏に祝辞を送った。
エルナンデス氏はSNSに投稿した動画で、「この決定が国民にとって有益であることを心から願う」と述べた。
有権者は第1回投票で暴力・不平等・インフレに対処してくれるであろう候補者を選び、二人のアウトサイダーが決選投票に進んだ。
ペトロ氏の勝利で南米に新たな左派国家が誕生することになった。チリ、ペルー、ホンジュラスでは2021年の大統領選で左派候補が勝利し、今年行われるブラジル大統領選でも現職の極右ボルソナロ(Jair Bolsonaro)大統領を左派の元大統領がリードしている。
一部の専門家は南米で最も深刻な問題を抱える左翼国家ベネズエラの没落がコロンビアの有権者を悩ませたと指摘している。
ペトロ氏は先月末の第1回投票で過半数は獲得できなかったものの、エルナンデス氏に大差をつけていた。しかし、決選投票の結果は予想以上に拮抗していた。
首都ボゴタの投票所でエルナンデス氏に投票したという男性はAP通信に、「ペトロ氏が政権公約通りに汚職を撲滅し、内戦を終わらせ、国を豊かにしてくれることを願っている」と語った。「ペトロ氏がコロンビアをベネズエラ、キューバ、アルゼンチン、チリのような国にしないことを願っています...」
選挙管理当局によると、投票率は約55%。登録有権者3900万人のうち約2160万人が投票を行った。集計作業は数日かかる予定。終了後、ペトロ氏は正式に勝利を宣言する。
何人かの国家元首がペトロ氏に祝辞を送った。ペトロ氏の政策を「インチキ」と批判していたコロンビア政治の中心人物ウリベ(Alvaro Uribe)元大統領も勝利を認めている。
最新の世論調査によると、エルナンデス氏は第1回投票でペトロ氏に大差をつけられたが、第1回投票で敗れた他の候補、いわゆる反左翼の票を集め、その差は急速に縮まった。
ペトロ氏は野心的な年金改革、減税、医療改革、農業改革、麻薬カルテルや武装勢力との戦闘終結に向けた協議などを提案している。ただし、改革に必要な法案を成立させるためには議会の承認を得なければならず、ペトロ氏の政党は過半数を獲得できていない。
米シンクタンク「ワシントン・オフィス・オン・ラテン・アメリカ」はSNSに、「支持者はペトロ氏に期待しているが、彼の公約を実行するためには議会の承認と膨大な予算が必要であり、恐らく多くの有権者が失望することになるだろう」と投稿している。
「ペトロ氏は法案を成立させるために様々な取引を提案すると思われますが、いくつかの公約は諦めなければならないでしょう。議会と対立すれば、国全体が膠着状態に陥る可能性もあります」