◎国際刑事裁判所(ICC)は現在、2017年のデモ参加者に対する拷問や恣意的な拘束を含む人権侵害でマドゥロ政権を捜査している。
ベネズエラのマドゥロ(Nicolas Maduro)大統領は首都カラカスの大統領府にペトロ(Gustavo Petro)大統領を招き、貿易や安全保障などについて協議した。
ペトロ氏は共同記者会見で、「ベネズエラとの関係をもっと早く改善すべきだった」と指摘し、「両国の関係が悪化した結果、国境付近は犯罪組織の支配下に置かれ無法地帯になってしまった」と述べた。
またペトロ氏は、「両国は今後、麻薬密売組織に関する情報を共有する方法を検討する」とした。
元左翼ゲリラのペトロ氏は今年8月に就任し、ベネズエラ国境付近などで活動している左翼ゲリラ「民族解放軍(ELN)」との和平交渉の仲介役にマドゥロ氏を指名している。
ペトロ氏の政策は前政権と全く異なる。ドゥケ(Ivan Duque)前大統領はマドゥロ政権を孤立させ、石油輸出を禁じ、自由で公正な選挙を実施させようとする米国の努力を支持していた。
米国、EU、コロンビアを含む数十カ国は2018年の大統領選に立候補した野党党首グアイド(Juan Guaido)氏をベネズエラの暫定大統領と認めている。
しかし、ペトロ氏は就任後すぐに方針を転換し、マドゥロ政権との外交関係を再構築した。
ベネズエラの野党政治家は1日、この首脳会談を糾弾した。
グアイド氏はツイッターを更新し、「ペトロ大統領は独裁者を大統領と呼び、ベネズエラの人権侵害の正常化に貢献した」と非難した。
国際刑事裁判所(ICC)は現在、2017年のデモ参加者に対する拷問や恣意的な拘束を含む人権侵害でマドゥロ政権を捜査している。
国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)はペトロ氏に宛てた書簡で、「マドゥロ政権は240人以上の政治犯を拘束している」と指摘し、外交・軍事関係を再構築するにあたり、マドゥロ政権に人権を遵守させるよう要請した。
またHRWはペトロ氏に、「ベネズエラ軍による麻薬密売組織や反政府組織への組織的な支援が停止されるまで、ベネズエラと防衛協力を結ぶべきではない」と付け加えた。
HRWと国連が行った調査によると、ベネズエラ軍は昨年、別の反政府勢力を根絶するためにELNと共同作戦を行い、ベネズエラ東部にある金鉱の占拠を許可したという。
ELNは金や麻薬取引で得た利益をベネズエラ軍に流しているとみられる。
マドゥロ氏はロシアによるウクライナ侵攻の影響で肥料の価格が高騰していることに言及し、「両国の肥料貿易の開発に興味がある」と述べた。
またマドゥロ氏はペトロ氏との会談を「激しく、実りある、素晴らしいもの」と評した。