▽元左翼ゲリラのペトロ氏は大統領就任以来、ELNや他の武装勢力との和平交渉を推進してきた。
コロンビアのペトロ(Gustavo Petro)大統領は20日、同国最大の左翼ゲリラ「民族解放軍(ELN)」との和平交渉が決裂し、過去3日間で80人以上が死亡したことについて、「ELNは戦争への道を選んだ」と非難した。
ペトロ氏はX(旧ツイッター)への投稿で、ELNが麻薬密売組織と化していると非難。そのやり方を伝説の麻薬王、故パブロ・エスコバル(Pablo Escobar)の手法になぞらえた。
ELNは1960年代に学生、労働組合、神父らによって結成され、キューバ革命からインスピレーションを得たとされる。構成員数は約6000人と推定され、ベネズエラでも活動し、金鉱山での違法採掘、麻薬密売、誘拐などで利益を上げている。
元左翼ゲリラのペトロ氏は大統領就任以来、ELNや他の武装勢力との和平交渉を推進してきた。
しかし、ゲリラを武装解除させる方法や、武装解除と引き換えに提供する経済支援の種類などで何度も意見が対立。和平に向けた協議は道半ばであり、この1年ほとんど進展していないように見える。
昨年9月にはベネズエラ国境付近でELNの爆弾攻撃により陸軍兵士2人が死亡、29人が負傷。政府は翌日、交渉を中断した。
ELNは政府が他の組織と個別交渉を行ったことに反発し、民間人を誘拐したり、麻薬を密売して利益を上げ、政府関係者を怒らせている。
ペトロ氏は先週末、「ELNが戦争犯罪を犯した」と非難し、和平交渉を中断すると発表した。
ベネズエラ国境沿いの北部カタトゥンボではELNとコロンビア革命軍(FARC)の分派である左翼ゲリラ「FARC-EMC」との戦闘が激化し、複数の地域で被害が拡大。少なくとも80人が死亡したと伝えっれているが、現地の状況は明らかになっていない。
ELNはカタトゥンボの複数カ所でFARC-EMCと交戦中とみられる。両組織は何年も前からコカの葉の主要生産地であるカタトゥンボの支配権をめぐって争ってきた。
この戦闘により、約5000人が避難を余儀なくされ、政府に支援を求めている。
カタトゥンボの交戦地帯には無数の地雷やIED(即席爆発装置)が仕掛けられているため、陸軍でも簡単に近づくことはできない。
AP通信は避難民の話しとして、「ELNは敵対するFARC-EMCとつながりのある市民を無差別に殺害している」と報じた。
しかし、ELNは20日の声明で、「市民を殺害しているのはFARC-EMCであり、我々は市民を保護するために戦っている」と主張した。
ロイター通信によると、カタトゥンボの少なくとも5つの地域で死者が確認され、そのうち少なくとも60人がFARC-EMCの戦闘員や関係者とみられる。
コロンビア内戦の犠牲者は45万人以上と推定されており、その大半が1985年~2018年の戦闘で死亡したとされる。