コロンビア政府が「経済非常事態」を宣言、増税へ、野党猛反発
政府はこれを通じて税収を増やし、燃料補助金や健康保険支払い、軍事費などの支出をまかなう意向だが、強権的との批判が強まっている。
.jpg)
コロンビア政府は23日、深刻な財政危機に対応するため「経済非常事態」を宣言した。この宣言により、ペトロ政権は議会の承認を経ずに大統領令で新たな税制を制定する権限を得ることになる。政府はこれを通じて税収を増やし、燃料補助金や健康保険支払い、軍事費などの支出をまかなう意向だが、強権的との批判が強まっている。
声明によると、ペトロ(Gustavo Petro)大統領は先ごろ議会での承認を得られなかった税制改革案の失敗を受けて非常事態宣言に踏み切った。この改革案は2026年の予算を約40億ドル増やすことを目指していたが、議会で否決された。2025年の国家予算は1340億ドル規模に拡大しており、公的支出はコロナ禍を上回る水準に達している。
非常事態宣言の根拠となったのは燃料補助金の維持、医療保険制度の支払い、反乱勢力の攻撃に対応する軍事インフラ整備への投資などだとしている。しかし、具体的な税制の内容はまだ公表されていない。地元メディアが入手したリーク文書によると、政府は企業や個人に対する富裕税や、アルコールへの消費税などを検討しているという。
これに対し、経済団体はソーシャルメディアへの投稿で、この非常事態宣言を「法の支配を無視するもの」と批判した。また、多くの法学者や経済専門家も、この措置が憲法が規定する非常事態の条件を満たしていないと指摘している。憲法上、非常事態は戦争や自然災害など即時かつ予測不能な危機が起きた場合に限定されるが、今回の財政赤字は昨年中頃から予見されていたとの見方があるためだ。こうした理由から、憲法裁判所が宣言を覆す可能性が高いとの見方も出ている。
野党や一部の市民団体は、政府が議会を迂回して税制を強行しようとしていると非難。逆に政権支持者は国家財政の安定化が急務であり、従来の政治プロセスでは対応が遅れると主張している。2026年は大統領選挙と議会選挙の年でもあり、今回の措置が政治的な影響を与える可能性も指摘されている。
コロンビアはここ数年、社会保障制度の財源や治安対策など多方面で財政的なプレッシャーに直面しており、今回の非常事態宣言はそうした状況を反映したものとみられる。経済専門家は税制改革と支出削減を総合的に進める必要性を強調する一方で、憲法や民主的手続きを逸脱することなく財政健全化策を模索することが求められると指摘している。
