コロンビア政府と麻薬カルテル、戦闘員を3地域に集約することで合意
交渉はカタールの首都ドーハで行われ、双方は2026年3月1日から段階的に、構成員を3つの地域に集めることで合意した。
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コロンビア政府は5日、同国最大の悪名高い麻薬カルテル「ガルフ・クラン(クラン・デル・ゴルフォ、CDG)」との交渉の結果、その構成員を特定区域に集約させ、国内の犯罪・暴力を抑えることで合意したと明らかにした。
交渉はカタールの首都ドーハで行われ、双方は2026年3月1日から段階的に、構成員を3つの地域に集めることで合意した。
発表によると、この3地域のうち2つは太平洋側のチョコ(Chocó)県、もう1つは隣接するコルドバ(Córdoba)県に設定された。
これらの地域は同組織が影響力を持つ地域であり、政府はここを「和平構築」の地域にする意向を示している。
また、今回の合意では、3地域への集約にあわせて、さらに10の自治体を対象にした和平プログラムが導入される。これらの自治体は、今年9月に最初に提示された5自治体と合わせ、武装組織や左翼ゲリラが根を張る地域での社会支援や地域復興を視野に入れた取り組みが実施される予定だ。
加えて、ガルフ・クランのメンバーに対する逮捕状や国外送還の要求は対象地域に集まる間、差し控えられることになる。これにより、一時的な「安全地帯」での停戦・交渉環境を確保したうえで、和平への道を探る格好だ。
この合意は左派のペトロ(Gustavo Petro)大統領が2022年に掲げた「全面和平(PAZ TOTAL)」政策の一環である。ペトロ政権は過去のゲリラとの和平合意後も、解散せず残留した武装勢力や犯罪組織との交渉を試みてきた。ガルフ・クランはその中でも最大勢力とされており、今回の動きはそうした「犯罪構造の解消」に向けた重要なステップとみられている。
ただし、過去の和平交渉では「地域への集約」が、武装勢力にむしろ再編と再組織化の余地を与えてきたという批判がある。つまり、地域に留まることで組織が密接に連携し直し、統制力を強化する温床になりかねないということだ。今回も同様の懸念が残る。
交渉を支援した政府関係者は「地域社会との平和共存と犯罪根絶に向けた第一歩」と強調するが、専門家の中には、「一カ所への集約や逮捕状停止は犯罪組織にとって時間稼ぎになる」と警戒する向きもある。結果として、今後の監視と透明性が、和平プロセスの成否を左右することになるだろう。
一方で、近年の報告では、複数の武装勢力、中でもガルフ・クランの構成員数や影響力が増加傾向にあることが指摘されており、単なる交渉による解決だけでなく、経済的支援や治安強化、根本的な構造改善が不可欠との見方もある。
今回の合意が履行されれば、コロンビアの長年にわたる内戦・犯罪問題の転換点になる可能性を秘めている。しかし、その道のりは平坦ではなく、今後どのように「地域の管理」「武装解除」「地域社会の安定化」が進むかに注目が集まる。
