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チリ大統領、学校の警備強化を約束、刺傷事件や銃持ち込み受け


発端となったのは北部アントファガスタ州カラマの学校で27日に発生した刺傷事件である。
2026年3月16日/チリの軍事基地、演説するカスト大統領(AP通信)

チリのカスト(José Antonio Kast)大統領は30日、学校で暴力事件が相次いだことを受け、教育現場の安全対策を強化する方針を表明した。これまで慎重論の強かった措置にも踏み込む姿勢を示し、社会全体の治安意識の変化を背景に政策転換を図る考えである。

発端となったのは北部アントファガスタ州カラマの学校で27日に発生した刺傷事件である。18歳の生徒が校内で刃物を用いて教職員や生徒を襲撃し、59歳の職員1人が死亡、ほか4人が負傷した。この事件は極めて深刻な学校暴力の事例と受け止められ、教育現場の安全性に対する信頼を大きく揺るがした。

さらに同日、中部クリコの学校でが15歳の生徒が弾薬を装填した銃を所持したまま校内に入ろうとする事件も発生した。実際に発砲はされなかったものの、銃器が学校に持ち込まれた事実は衝撃を与え、社会不安を一層高める結果となった。

カスト氏は声明で、「生徒を守るための措置を講じる必要がある」と述べ、従来は強い反対に直面してきた対策についても再評価すべきだと強調した。また治安環境の変化により、学校も例外ではいられないとの認識を示し、より厳格な安全管理の導入を正当化した。

政府が検討している具体策には学校への出入り管理の強化や、教員による生徒の持ち物検査を可能にする法整備が含まれる。また、金属探知機の設置を加速させるなど、物理的な防犯体制の拡充も進める方針である。これらの措置はプライバシーや教育環境への影響を懸念する声からこれまで導入が進んでこなかったが、今回の事件を受けて世論の受け止め方に変化が生じている。

チリでは銃撃などの重大事件は比較的まれであったが、近年学校内での暴力が徐々に顕在化している。2024年には学生が製造した爆発物によって多数の負傷者が出る事件が発生し、2025年には校内での発砲事件も確認された。こうした事例は従来の「安全な学校」という認識が揺らぎつつあることを示している。

政府の方針は教育現場の安全確保を最優先とする姿勢を明確にする一方で、監視強化と自由な学習環境とのバランスという課題も浮き彫りにしている。政府の新たな取り組みがどこまで実効性を持つか、そして社会的合意を得られるかが今後の焦点となる。

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