ブラジル大統領、ハイチ国連支援ミッションの強化求める

国連によると、一連のギャング暴力により、130万人もの市民が避難を余儀なくされている。
ブラジルのルラ大統領(Getty Images)

ブラジルのルラ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領は13日、資金不足で人員が不足している国際ハイチ支援ミッションがギャングの暴力に圧倒される中、ハイチに強力な平和維持部隊を派遣するよう求めた。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

首都ポルトープランスでは3年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。大統領のポストは今も空席のままだ。

ポルトープランスの90%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

ポルトープランスと周辺地域の暴力は昨年10月頃から激化。アルティボニット県ではグラン・グリフとみられる武装ギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

最新のギャング間抗争は3月初めに勃発。ポルトープランスの大部分を支配するギャング連合「ヴィヴ・アンサム(Viv Ansam)」と対立する複数のギャングが民間人を巻き込みながら激しい縄張り争いを繰り広げている。

国連によると、一連のギャング暴力により、130万人もの市民が避難を余儀なくされている。一部の専門家はケニア主導の国連支援ミッションを「不十分」と指摘し、平和維持部隊が必要としている。

ルラ氏は首都ブラジリアでカリブ海諸国の首脳と会談。国連に対し、現在の体制でミッションの資金集めを継続するか、正式な平和維持部隊への転換を求めると述べた。

またルラ氏は「安全保障状況の安定化は政治プロセスにおける次のステップ、大統領選挙を実施するための不可欠な条件である」と強調した。

ブラジルは2004年から17年までハイチ平和維持ミッションを率いたが、コレラの流行や人権侵害疑惑が相次ぎ、多くのハイチ人がPKOに警戒感を抱く結果となった。

国連はハイチミッションの資金を管理しており、これは各国からの任意の寄付金で賄われている。多くの国が要員を約束している。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のターク(Volker Turk)高等弁務官は13日、一連のギャング暴力により、今年1月から5月末までの間に少なくとも2680人が死亡したと明らかにした。

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