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ブラジル上院、ボルソナロ前大統領の刑期を短縮する法案可決

法案はボルソナロ氏の刑期を大幅に短縮する内容を含み、政治的な対立と国民の分断を一段と深めている。
ブラジル、首都ブラジリア、連邦議会上院(Getty Images/AFP通信)

ブラジルの連邦議会上院は17日、ボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領の禁錮27年の刑を大幅に短縮する可能性のある法案を賛成多数で可決した。

同法案は下院でも承認されており、ルラ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領の署名を経て成立するかどうかが焦点となっている。

法案はボルソナロ氏の刑期を大幅に短縮する内容を含み、政治的な対立と国民の分断を一段と深めている。

この法案は複数の罪状に基づいて科された刑期を統合し、刑の計算方法を変更するものである。ボルソナロ氏は9月、2022年の大統領選挙後にクーデターを試みた罪などで27年超の実刑判決を受けているが、法案が成立すれば刑期は大幅に短縮され、実際に服役する期間は数年程度にまで抑えられる可能性があるとされる。具体的には、刑の加算を見直すことで刑務所での服役期間が2年余りになるとの見方もある。

法案はボルソナロ氏だけでなく、2023年1月8日に首都ブラジリアで発生した政庁舎や議会、最高裁判所への襲撃事件に関与した多数の受刑者にも適用される。これらについても刑期が軽減される可能性があり、刑の進行が現在より早まる条項が含まれている。法案では指導的役割を果たした者や資金提供者を除く一般参加者について刑期の1/3〜2/3を軽減する規定が設けられている。

法案は現在、ルラ氏の署名待ちの段階である。ルラ氏はかねてからこの法案に反対の意向を示しており、拒否権を行使すると報じられている。ルラ政権の報道官は以前、「民主主義を攻撃した者は罪に対して責任を負うべきだ」と述べ、法案が最高裁の決定を軽視するものであり、民主主義を守る立法にとって重大な後退であるとの見解を示していた。

一方、法案を支持する側は「国の和解への一歩」として歓迎の意を示している。法案を起草した議員団は、法案によってボルソナロ氏の刑が軽減される可能性について言及し、広範な社会的和解につながるとの見方を示した。また、ボルソナロ氏の長男であり有力な大統領候補でもあるフラヴィオ・ボルソナロ(Flávio Bolsonaro)上院議員も同法案を称賛し、これを父親の刑事手続き全体を見直す第一歩と位置付けている。

この法案成立を巡っては国内で大規模な抗議行動も発生しており、サンパウロやブラジリアなど主要都市で法案に反対する数万人規模のデモが行われている。法案の是非をめぐる国民の意見は大きく分かれており、反対派はこの動きを「事実上の恩赦」と批判する一方、支持派は政治的対立の緩和につながると主張している。

法案がルラ氏の署名を得て成立した場合でも、裁判所への法的挑戦が予想されており、最高裁が最終的な判断を下す可能性がある。ルラ氏の拒否権行使と議会との対立、国民の大規模な抗議という複雑な情勢の中で、法案の行方は依然として不透明である。

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