ブラジルで「ロブスタ種」コーヒーの品質向上を目指す動き活発化
最大都市サンパウロの洒落たカフェでは、ロブスタ豆100%を使った“プレミアム”エスプレッソが提供されている。
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ブラジルでは現在、いわゆる“安価な補助的コーヒー豆”とみなされてきたロブスタ種コーヒー(Robusta)の品質向上を目指す動きが活発化している。
これは地球温暖化など気候変動によって、これまで高級コーヒー豆として主流だったアラビカ種コーヒー(Arabica)の栽培地が縮小に追い込まれると予測されるなかで、生き残りを図る農家の戦略である。
最大都市サンパウロの洒落たカフェでは、ロブスタ豆100%を使った“プレミアム”エスプレッソが提供されている。抽出された一杯は、濃厚なクレマと、チョコレートのような香りを備え、従来ロブスタに抱かれてきた「安い・即席向き」というイメージを大きく覆す味わいだ。こうした店の試みは、“アラビカなし”と謳われ、新たなロブスタの価値を消費者に提示している。
農園の現場では従来の栽培・収穫・乾燥方法を見直す取り組みが進んでいる。乾燥に際して、煙や高温熱を伴う旧来型の火乾式を見直し、近代的な乾燥機を導入したり、選別を厳格化することで、香味劣化を防ぎ、高品質なロブスタ豆の生産を目指す農家が増えている。特に、ブラジル最大のロブスタ協同組合Cooabrielなどが中心となり、世界各地のスペシャルティコーヒーの展示会へ出展する動きも活発だ。
また、気候変動によってアラビカ栽培に適した土地の多くが2050年までに使用不可能になるとの研究もあり、ロブスタへの関心は単なる流行ではなく、持続可能性を見据えた実利的な選択と捉えられている。このため、これまでアラビカを専門に栽培してきた農家のなかからも、ロブスタ栽培へ転換する者が増えてきた。ブラジルのロブスタ生産地である南東部エスピリトサント州では、ロブスタの苗木生産数を年200万株から1000万株へ引き上げる計画も進行中だという。
このような品質の向上と生産拡大が奏功し、今年は“スペシャルティロブスタ”の相場が急騰。60キログラム袋あたりの平均価格は295ドルを超え、2021年時点の2倍以上となっている。国際的なコーヒー豆先物価格も大きく上昇し、ロブスタは再び注目の的となっている。
一方で、「高級コーヒー=アラビカ」という固定観念を覆すには時間がかかる見通しだ。だが、国際的な専門コーヒー団体であるSCA(Specialty Coffee Association)は今年、評価基準とフレーバー記述の語彙を更新し、ロブスタ豆についての適正な評価ができるよう制度を改善。これにより、ロブスタが“安価な補助豆”ではなく、それ自体が“スペシャルティコーヒー”として認められる土壌が徐々に整いつつある。
こうした動きは気候変動や市場価格の高騰でコーヒーの安定供給が危ぶまれる中、国際的な焙煎業者やカフェ、そして消費者にとっても大きな転換点となる可能性がある。ロブスタがかつての「安コーヒー豆」から本格派の「味と香りのあるコーヒー豆」へと再定義されつつあるのだ。
