ブラジル大統領が米国とベネズエラの対立に言及「壊滅的な結果招く」
トランプ米大統領は今月、制裁対象のベネズエラ産タンカーの出入りに対する「封鎖」を命じ、ベネズエラ政府への経済的圧力を一段と強化している。
と米国のグレネル特使(ABCニュース).jpg)
ブラジルのルラ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領は20日、米国によるベネズエラへの武力介入が「人道的な大惨事」を引き起こすとの強い警告を発した。
ルラ氏は記者団に対し、米国の介入は地域の平和と安全保障に深刻な悪影響を及ぼす恐れがあると述べ、外交的解決を求める姿勢を明確にした。
またルラ氏は米軍による武力介入が実行されれば南米全域にとって「人道的な大惨事となり、世界に危険な前例を残す」と指摘。米国が軍事的存在感を強めていることに懸念を表明し、1982年のフォークランド紛争になぞらえつつ、「南米大陸が再び外国の軍事的圧力にさらされている」と強調した。
この発言は米国がベネズエラに対する圧力を強めているさなかに出されたものだ。トランプ(Donald Trump)大統領は今月、制裁対象のベネズエラ産タンカーの出入りに対する「封鎖」を命じ、ベネズエラ政府への経済的圧力を一段と強化している。この措置はベネズエラの主要な収入源である石油産業を直撃するものであり、米国側はこれをマドゥロ政権への圧力強化策と位置づけている。
ブラジル南部で開催された南米南部共同市場(メルコスール)首脳会議ではアルゼンチン、パラグアイ、パナマ、ボリビア、エクアドル、ペルーなどの指導者が共同声明に署名し、ベネズエラ情勢に関する平和的・民主的な解決への意志を再確認した。声明では暴力的な手段ではなく、対話と外交を通じた問題解決の重要性が強調された。
一方で、米国の動きに対しては国際的に意見が分かれている。米国側はベネズエラ周辺での軍事活動を麻薬密輸対策と位置付けているが、ベネズエラ政府およびその支持者はこれを政権転覆の試みだと非難している。また、米国内でも今回の圧力強化が国際法上合法か否かについて疑問の声が上がっており、軍事的緊張がさらに高まる可能性が指摘されている。
ルラ氏は前日にも、ラテンアメリカが「平和の地帯」であり続けるべきだと訴え、外部勢力による介入は破壊的な結果をもたらすとの見解を示していた。またルラ氏は外交上の調整役として、米国とベネズエラの双方に対して慎重な対応を求める意向も示しており、地域紛争の拡大を避けるためには対話が不可欠であると強調した。
今回の発言は米国の圧力強化を背景に南米地域で高まる緊張を象徴するものとなっており、今後のベネズエラ情勢が地域全体に与える影響について国際社会の注目が集まっている。平和的解決の道筋をいかに描くかが、当面の外交上の課題となる見込みだ。
