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ブラジル・ルラ大統領、ボルソナロ氏の刑期短縮につながる法案に拒否権行使

この決定は、2023年のクーデター未遂事件の3周年に合わせてブラジリアの大統領府で行われた式典で示されたものであり、民主主義の守護を強調するルラ氏の姿勢が鮮明になった。
2023年1月8日/ブラジル、首都ブラジリアの連邦議会議事堂、ボルソナロ前大統領の支持者と機動隊(Eraldo Peres/AP通信)

ブラジルのルラ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領は8日、ボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領の刑期を大幅に短縮する可能性がある法案に対して拒否権を行使したと発表した。この決定は、2023年のクーデター未遂事件の3周年に合わせてブラジリアの大統領府で行われた式典で示されたものであり、民主主義の守護を強調するルラ氏の姿勢が鮮明になった。

問題となった法案は昨年12月に上院で可決されたもので、複数の罪状で有罪判決を受けているボルソナロ氏の27年超の刑期を数年程度に短縮することを可能にする内容だった。具体的には、クーデター未遂や民主主義秩序の破壊に関する複数の刑を合算せず、より軽い罪状扱いにすることで、刑期を大幅に減らすことが想定されていた。法案が成立していた場合、ボルソナロ氏らに対する実際の服役期間が大きく短縮される可能性があった。

ボルソナロ氏は2025年11月にこの事件に絡む有罪判決を受け、刑務所で服役を開始している。裁判では、2022年の大統領選挙で敗北した後、選挙結果を覆そうとするクーデター未遂に関与したとされ、複数の重罪で有罪となった。弁護側は健康上の理由などを挙げて自宅軟禁を求めるなどしているが、これまでの判決は支持されている。

ルラ氏は拒否権行使に際し、「過去を忘れる権利はない。私たちはどんな独裁も受け入れない」と述べ、ブラジルの民主主義と法の支配を守る立場を強調した。また、1月8日は政府機関への攻撃があった日として歴史に刻まれているとし、「民主主義の勝利の日」と位置づけた。

議会はルラ氏の拒否権を覆す権限を有しているものの、政治的なリスクが高いとして専門家らは慎重な見方を示している。特に2026年10月に予定される総選挙を控え、法案の是非を巡る国民や議会内の対立が今後の選挙戦の焦点の一つになる可能性もある。

ルラ氏自身は3期目の大統領選でボルソナロ氏と競った経緯があり、今回の決定はその政治的な背景も垣間見せるものとなった。ボルソナロ氏は2025年の選挙で資格を失い、2030年まで公職追放となっている。だが長期に及ぶ刑期と政治的立場の維持は、同氏の支持基盤にとって依然として重要な問題となっている。

法案を巡っては、暴動で有罪となった他の関係者にも刑期短縮の恩恵が及ぶ可能性があった。この点も含め、国民や法曹界では法案の是非について激しい議論が続いていた。

今回の拒否権行使は、ブラジル国内の民主主義の基盤を巡る重要な局面となる。今後、議会がどのような対応を示すか、また司法の判断がどのような影響を与えるかが引き続き注目される。

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