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ブラジル大統領「EU・メルコスール自由貿易協定1月に署名できる」

協定は約26年間にわたって調整されてきたが、フランスやイタリアなど欧州側の反対や農家の抗議を受けて最終署名が遅れている。
ブラジルのルラ大統領(Getty Images)

ブラジルのルラ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領は20日、EUと南米南部共同市場(メルコスール)による自由貿易協定が来年1月に署名されるとの見通しを示した。協定は約26年間にわたって調整されてきたが、フランスやイタリアなど欧州側の反対や農家の抗議を受けて最終署名が遅れている。今回の遅延にもかかわらず、ルラ氏は協定締結に前向きな姿勢を崩さず、交渉が最終段階にあるとの楽観的な見解を示した。

この協定はメルコスールを構成するブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、およびEU加盟国との間の貿易障壁を大幅に削減し、双方にとって世界最大級の自由貿易圏を形成するものとして期待されている。当初はブラジルで今月署名される予定であったが、EU加盟国間での意見調整が整わず、署名は「数週間」遅れるとの見通しが発表された。

ルラ氏は南米の主要指導者らが出席した会議で、予定されていた署名が持ち越されたことについて言及。「欧州側が最終的な署名の意思を示している」と述べた。遅延の要因については、イタリアのメローニ(Giorgia Meloni)首相が加盟国内での協議を求めたことが影響していると指摘した。

EU側では、欧州委員会のフォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長が署名に向けて加盟国の約3分の2の支持を得る必要があると説明している。イタリアの反対は協定に賛成するための十分な票を欠く結果につながりうるため、調整が続いている。またフランスのマクロン(Emmanuel Macron)大統領も加盟国の間で農家の懸念に応える追加策が必要との立場を示している。

この貿易協定が署名されれば、約7億8000万人の消費者市場をカバーし、世界のGDPの4分の1に相当する経済圏を対象とすることになる。関税は段階的に撤廃され、工業製品や農産品を含むほとんどの商品について貿易の自由化が進む見込みだ。ルラ氏は「政治的意思と指導者の勇気がなければ、26年に及ぶ交渉を完了することはできない」と述べ、引き続き交渉を推進する意向を示した。

またルラ氏は交渉が遅れたとしても、世界がメルコスールと取引を望んでいると強調し、同地域が他の貿易相手とも協定締結を進める姿勢を示した。

一方でフランスやイタリアを中心に農業団体などが協定に反対し、欧州内で抗議デモが展開されているとの報道もある。これらの融和策や懸念への対応が署名時期に影響を与えているとみられる。今後の加盟国の合意形成が焦点となる。

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