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ブラジル大統領、EU・メルコスール自由貿易協定を称賛、1月17日署名へ

メルコスールはブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイの4か国で構成され、今回の協定は同地域にとって初の大規模な貿易合意となる。
2026年1月16日/ブラジル、リオデジャネイロ、ルラ大統領(右)と欧州委員会のフォンデアライエン委員長(AP通信)

ブラジルのルラ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領は16日、EUと南米南部共同市場(メルコスール)との間で合意に至った自由貿易協定について、改めて歓迎の意を表明した。協定は25年以上にわたる交渉を経て成立し、1月17日にパラグアイで正式に署名される予定だが、ルラ氏自身は署名式に出席しないことを明らかにした。代わりに外相を代表として派遣する予定だ。

ルラ氏はリオデジャネイロでEUの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン(Ursula von der Leyen)委員長と会談し、署名前の共同声明を発表した。ルラ氏は協定について「世界最大級の自由貿易圏を創設する歴史的な一歩」と評し、約7億2000万人と22兆ドル超のGDPを有する巨大な経済圏が形成されると強調した。

メルコスールはブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイの4か国で構成され、今回の協定は同地域にとって初の大規模な貿易合意となる。交渉は1990年代から続けられてきたが、加盟国間やEU側の政治的・経済的な調整により長期化していた。協定は関税の大幅削減や市場アクセスの拡大を柱としており、南米の農産品や工業製品がEU市場への輸出拡大を目指す内容となっている。

ルラ氏が署名式に不参加となった背景には、協定の正式合意が遅れたことへの不満があるとの見方が出ている。ブラジルがメルコスール議長国を務めていた時期に合意に至らなかったことについて、ルラ氏は交渉が長引いた経緯を振り返りつつも、今後は協定を通じた経済成長を促進したいと述べた。

EU側からはルラ氏への賛辞が寄せられた。フォンデアライエン氏はルラ氏の政治的リーダーシップと交渉への献身を高く評価し、協定締結が多国間主義へのコミットメントを示すものだと強調した。EUとメルコスールのパートナーシップは、米中両国が推進する保護主義的傾向に対抗し、貿易の自由化と経済協力の深化を図るうえで重要な意義を持つと説明した。

協定の経済的効果については、ブラジルの政府系機関が試算を公表している。即席コーヒーや鶏肉、オレンジジュースなどの農産物輸出がEU市場で約70億ドルの収益増加を見込めるとしている。ただし、今回の協定はEU側に比較的有利との評価もあり、ルラ氏自身も「メルコスールが単なる原料輸出国の役割にとどまってはならない」と述べ、付加価値の高い工業製品の生産と輸出促進を目指す方針を示した。

一方で、協定には懸念の声もある。特にEU内では農業従事者からの競争激化を懸念する反対意見が強く、環境保護や労働基準に関する保障措置の導入が条件となった経緯がある。また、協定は署名後にも加盟国内での議会承認が必要であり、導入には時間がかかる見通しだ。

今回の自由貿易協定は世界貿易の新たな枠組みを形成する契機とされているが、その成功には加盟国間の調整や国内の産業保護とのバランス調整が重要となる。ルラ氏は署名式への不参加という異例の判断を示しつつも、今後の経済連携強化に向けた積極的な取り組みを続ける考えを示している。

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