ボルソナロ氏に禁固27年3ヵ月、ブラジル最高裁、クーデター裁判
ボルソナロ氏が訴追された経緯はパンデミック対応の失敗、環境政策の緩和、選挙制度への挑戦、権力行使における違法性の疑いなど複数の要因が絡み合ったものである。
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クーデター未遂に関連する5つの罪状で起訴されているブラジルのボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領の有罪が確定した。
5人の判事で構成される最高裁判所のパネルは11日、4人がボルソナロ氏の有罪を支持。禁固27年3ヵ月の実刑判決を言い渡した。
ボルソナロ氏は現在、首都ブラジリアで自宅軟禁下にある。同氏はこの判決に対して上訴することができる。
この事件を審理した5人の判事のうち4人が5つの罪で有罪とした。
この判決を受けて、トランプ(Donald Trump)米大統領はホワイトハウスの記者団に対し、「非常に不満だ」と語った。
またトランプ氏はボルソナロ氏を「常に傑出した人物だと考えてきた」と述べた。
トランプ氏はボルソナロ氏が「魔女狩り裁判」にかけられているとして、この裁判を打ち切るよう要求。ブラジルの関税率を50%に引き上げ、最高裁のジモラエス(Alexandre de Moraes)判事に制裁を科し、その他政府関係者のビザを取り消した。
ボルソナロ氏の弁護団は判決後、最高裁に上訴すると表明した。
ボルソナロ氏は2019年から2022年まで在任した右派政治家であり、在任中および退任後の行動を巡って複数の訴追・調査の対象となっている。その経緯は国内政治の分断、パンデミック対応、環境政策、選挙制度に対する挑戦など、複数の要因が複雑に絡み合っている。
ボルソナロ氏に対する最初の大きな批判の一つは、新型コロナウイルス感染症への対応であった。在任中、ボルソナロ氏は科学的根拠に基づく感染拡大防止策を軽視し、マスク着用や社会的距離の確保、ロックダウンの実施を拒否する姿勢を貫いた。また、ワクチン接種に対しても消極的な発言を繰り返し、感染拡大の抑制よりも経済活動の維持を優先する姿勢を示した。この結果、ブラジル国内でのコロナよる死亡者数は多大となり、公衆衛生上の危機を深刻化させた。
このパンデミック対応に関して、ブラジルの検察当局(検察総長や連邦警察)はボルソナロ氏が意図的に公衆衛生上の危険を放置した可能性を調査対象とした。具体的には、国家の危機管理義務を怠った「公務執行妨害」や「過失致死」の疑いが中心であり、これにより複数の刑事訴追が検討された。また、コロナ対応に関連して、偽情報の拡散や医薬品の誤った推奨を通じて国民に誤った判断を促したことも問題視された。
加えて、環境政策における問題も訴追の一因となった。ボルソナロ政権下ではアマゾン熱帯雨林の違法伐採や森林火災が増加し、環境保護措置の緩和や監督機関の権限縮小が行われた。これにより国内外から批判が集中し、環境犯罪や公共資源管理の不適切さについての司法調査が開始された。特に、伐採業者や鉱山業者との関係性が疑われ、環境政策の意図的な緩和が違法行為を助長した可能性が検討された。
さらに、政治的権力の行使や選挙制度への挑戦も訴追の背景となっている。2022年の大統領選挙に敗北後、ボルソナロ氏は選挙結果の正当性を公然と否定し、不正選挙の主張を繰り返した。この行動は民主的手続きを軽視し、憲法上の義務を逸脱したとして、司法当局による調査の対象となった。特に、ブラジル選挙管理機関(TSE)や連邦検察は選挙制度への干渉や情報操作の可能性を重視し、政権関係者や支援者による違法活動の有無を精査した。
ボルソナロ氏自身の言動も訴追の材料となった。SNSや公開演説での過激な発言、暴力行為を煽る言動、検察や司法機関への批判は、法的手続きや調査の妨害行為と見なされることがある。これらを通じて、検察は公務員としての責任を果たさなかった点や、国家機関の権威を損なった行為について刑事責任の有無を判断している。
このような複数の要素が重なり、ボルソナロ氏は退任後も訴追の対象となり続けている。検察は証拠収集を進め、政府関係者や企業関係者の証言、文書、通信記録などを分析している。訴追内容は、パンデミック対応の失敗に関する過失、環境保護違反、選挙干渉や情報操作、国家権力の濫用など、多岐にわたる。また、政治的背景や社会的影響を考慮し、司法手続きは慎重に進められている。
ボルソナロ氏が訴追された経緯はパンデミック対応の失敗、環境政策の緩和、選挙制度への挑戦、権力行使における違法性の疑いなど複数の要因が絡み合ったものである。これらはブラジル国内の司法機関による監視と調査の対象となり、民主主義の法治原則に基づく責任追及の一環として位置づけられる。今後の裁判や調査の進展は、ブラジルの政治的安定や権力の行使に対する司法の役割を示す重要な指標となる。