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ボリビア前大統領逮捕、裁判所が勾留命じる、公金不正流用疑惑

アルセ氏は10日に逮捕され、財務相時代に公金を不正流用した容疑などで取り調べを受けている。
2025年12月12日/ボリビア、首都ラパス、刑務所に移送されるアルセ前大統領(中央)と警察関係者(AP通信)

南米ボリビアの裁判所は12日、汚職容疑で逮捕されたアルセ(Luis Arce)前大統領について、裁判を待つ間、勾留するよう命じた。アルセ氏は先月退任したばかり。この勾留命令は政治的緊張を一段と高める可能性がある。

アルセ氏は10日に逮捕され、財務相時代に公金を不正流用した容疑などで取り調べを受けている。捜査当局はアルセ氏が先住民コミュニティ支援を目的とする国営開発基金から数百万ドルを個人口座に移したとみている。疑惑が浮上したのは2017年ごろで、長らく捜査は進展せずにいた。

現地メディアによると、公判日は未定。首都ラパスの裁判所は逃亡の恐れや捜査妨害のおそれがあるとして、アルセ氏の勾留を維持する必要があると判断した。

アルセ氏はラパスの州立刑務所に収容されているが、健康上の理由がある場合には保釈を申請することが可能とされる。

アルセ氏は捜査段階から一貫して疑惑を否定しており、政治的動機に基づく弾圧と主張している。

アルセ氏は裁判所で「私は政治的理由で標的にされているだけだ」と主張。基金の運営には関与していなかったと述べた。支持者や一部の同僚はこの逮捕が保守政権による前左派政権への報復であるとの見方を示している。

アルセ氏は社会主義運動(MAS)の指導者であり、2020年に大統領に就任、先月退任した。

10月の大統領選決選投票では中道右派のパス(Rodrigo Paz)大統領が勝利し、20年余りに渡って続いた左派による一党支配は終焉を迎えた。パス政権は汚職撲滅を掲げており、特に公的資金の透明性確保や過去の不正疑惑の徹底追及を公約として掲げていた。このため、今回の逮捕はパス政権の公約実行とも受け止められている。

一方で、この捜査はボリビア国内の深刻な政治的分断を象徴するものともなっている。MAS支持者はアルセ氏の政敵による弾圧だと非難しており、司法の中立性について議論が巻き起こっている。反対に、保守派や汚職対策を支持する勢力からは、これまで見過ごされてきた不正を正す機会として歓迎する声もある。

アルセ氏は有罪となった場合、6年以下の禁固刑に処される可能性がある。

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