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ボリビア首都で燃料補助金の廃止に抗議するデモ、価格高騰で混乱

労働者たちは新政権が実施した燃料補助金の廃止に抗議し、公共交通機関は運行を停止、路上では抗議者がバリケードを築き、市民生活に深刻な混乱が生じている。
2025年12月19日/ボリビア、首都ラパス、政府による燃料補助金の廃止に抗議するデモ(AP通信)

ボリビアの首都ラパスで19日、燃料価格の急騰に抗議する交通機関職員による大規模なストライキが実施された。労働者たちは新政権が実施した燃料補助金の廃止に抗議し、公共交通機関は運行を停止、路上では抗議者がバリケードを築き、市民生活に深刻な混乱が生じている。

今回の混乱はパス(Rodrigo Paz)大統領が燃料補助金を廃止したことを受けたもので、政府は長年支援してきた燃料価格の低廉化策を撤回した。

補助金の廃止によりガソリンとディーゼルの価格はほぼ倍増し、それに伴い交通運賃や食品価格も急騰している。ストの中心となった労働組合の書記長は地元テレビ局の取材に対し、「補助金廃止が撤回されない場合、抗議は全国に拡大する可能性がある」と警告した。

抗議デモには一般市民も参加しており、長い行列が形成されるなど日常生活への影響が拡大している。ある主婦は「政府は国民に最悪のクリスマスプレゼントを与えた」と述べ、運賃と食品価格の上昇に強い不満を示した。

政府側はストの影響を抑えるため都市交通の運賃交渉を各市長に委ねる方針を示す一方、補助金廃止の決定は「交渉の余地がない」と強調している。大統領府の報道官はこの措置について「痛みを伴うが必要な改革」と説明。これによって経済の安定化と成長を図る考えを示した。

パス氏は先月就任し、20年に及ぶ左派の一党支配を終えて中道右派の政権を発足させたばかりだ。政府は補助金廃止により年33億ドル相当の財政支出が削減できると説明し、これを投資に充てる計画だと述べている。また最低賃金の20%引き上げや低所得層向けの社会給付の維持といった対策も同時に打ち出している。

政府はインフレ率が年22%に達し、財政赤字がGDPの12.5%に拡大していると指摘。燃料補助金の撤廃は財政健全化に不可欠だとしている。しかし燃料の輸入依存度が高いボリビアでは、補助金撤廃によって価格が国際水準に近づいたことで生活費への圧迫が一段と強まり、市民生活への打撃となっている。燃料不足は農業や食品生産にも悪影響を及ぼし、食料価格も上昇している。

一方、ビジネス界や米国政府は一連の経済改革を支持しており、立法府は安定化支援を目的としたアンデス開発公社(CAF)からの5億5000万ドルの初期融資を承認した。米国からは投資促進に向けた経済計画への関心も示されており、政府は国際社会と協力しながら経済の立て直しを図る姿勢を強調している。

今回の交通ストは燃料価格引き上げを巡る国民の不満が噴出したものであり、政府の経済政策が今後の政治的安定にどのような影響を与えるかが注目されている。

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