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ボリビア、米国とイスラエルに対するビザ要件を撤廃、関係改善へ

この措置は約20年ぶりに政権交代で誕生した中道右派政権、パス大統領によるもので、観光振興と米国との関係強化の一環と位置づけられている。
2025年10月19日/南米ボリビア、首都ラパス(AP通信)

ボリビア政府は1日、米国およびイスラエル、さらに韓国、南アフリカ、東欧の数か国などを対象に、観光目的でのビザ(査証)要件を撤廃した。

これにより、これらの国の旅券所持者は有効なパスポートさえあれば最大90日間、ビザなしで入国できるようになった。

この措置は約20年ぶりに政権交代で誕生した中道右派政権、パス(Rodrigo Paz)大統領によるもので、観光振興と米国との関係強化の一環と位置づけられている。

背景には深刻な米ドル不足と経済危機がある。輸入が滞り、経済全体が停滞している中、外国人観光客の呼び込みでドル収入を確保したいという政府の思惑がある。

これまでの左派政権下では、米国やイスラエルからの観光客に対してビザ取得を義務付けていた。これは、米国やイスラエルとの外交関係や政治的な立場を反映した措置だった。 同時に、訪問者に対してはビザ申請および費用負担があり、手続きが煩雑とされていた。

今回のビザ免除により、観光のハードルが大幅に下がることから、ボリビア国内の観光産業や関連サービス業の回復が期待されている。政府高官はこのビザ制限が2007年以降ボリビアに約9億ドルの観光収入の機会損失をもたらしたと指摘。今回の変更で、今後数年で新たに約8000万ドルの観光収入を見込むと述べている。

また、政府は観光を「優先分野」「横断的政策」の柱と位置づけ、税制緩和や投資誘致とあわせて経済再建を図る姿勢を見せている。

ただし、訪問にあたっては注意事項もある。たとえば、米国は同国への渡航について「注意を要する地域」があるとして警告を出しており、とくにケシ栽培地域など一部地域では治安上の懸念があるとしている。

政治的には、今回のビザ免除は過去の外交方針からの明確な転換を示すものだ。長年、米国やイスラエルとの関係を距離をおいてきたボリビアが、観光や経済を通じて「再接近」を図るという意志を示した形だ。

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