SHARE:

ブラジル下院、ボルソナロ前大統領の刑期を短縮する法案可決

この法案は2023年1月8日に発生した連邦議会・司法・大統領府への襲撃事件の有罪判決を受け、現在27年の刑に服しているボルソナロ氏らに適用される。
2025年12月9日/ブラジル、首都ブラジリアの連邦議会(AP通信)

ブラジル議会下院は10日、ボルソナロ(Jair Bolsonaro)前大統領の刑期を大幅に短縮する可能性のある法案を可決した。
この法案は2023年1月8日に発生した連邦議会・司法・大統領府への襲撃事件の有罪判決を受け、現在27年の刑に服しているボルソナロ氏らに適用される。

法案を提出した中道議員は「和解」を目的とするものだと述べており、上院およびルラ(Luiz Inácio Lula da Silva)大統領の承認を経れば、ボルソナロ氏の収監期間は「2年4か月」にまで短縮される可能性があるという。

具体的には、ボルソナロ氏が有罪となったうち「クーデター未遂」と「民主制度の暴力的廃止の試み」という二つの罪について、それぞれ別々に科されていた刑を「重ねて」ではなく「同時に(併合して)」適用するよう見直す。つまり、複数の罪状による累加刑を見直すことで、刑期そのものを大幅に減らすというものだ。

加えて、仮釈放や条件付き釈放の仕組みも変更される。現行では実刑の一定割合を務めた後で仮釈放の資格が得られるところ、法案ではその割合が従来の「4分の1」から「6分の1」に短縮される。これも釈放を早める効果がある。

なお、この法案は「有罪取り消し(赦免/無罪)」ではなく、「あくまで刑期短縮」であり、ボルソナロ氏および関係者の有罪は維持される。

この法案をめぐる下院の採決は議会内で大きな混乱と緊張を伴った。291対148で可決されたが、その過程で与党議員による抗議や座席占拠、一時的なテレビ中継遮断、押し合いなどが発生したと報じられている。

法案はまだ上院での審議とルラ氏の署名を必要とする。ルラ氏はこの法案に対して拒否権を行使する可能性があり、政治的対立は依然として続く見通しだ。

さらに、法案が可決されても、憲法裁判所など司法の場で違憲性や整合性が問われる可能性も指摘されており、実際に刑期が短縮されるかは不透明だ。

ボルソナロ氏は9月、クーデター未遂や民主制度破壊の扇動など複数の罪で有罪となり、27年を超える懲役刑を言い渡された。これを受け、11月22日から連邦警察の拘置施設で服役が始まっている。

ボルソナロ氏の弁護団は健康上の理由を理由に医療措置や自宅軟禁への移行を求めているとも報じられ、政治・法廷の両面で動きが続いている。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします