アルゼンチン労組がミレイ政権の改正労働法案に抗議
デモ参加者は「権利を減らすな、仕事と尊厳を増やせ」と訴え、労働者の権利擁護を求める声を上げた。
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アルゼンチンの労働組合連合は18日、首都ブエノスアイレスを含む国内各地で大規模なデモを行い、ミレイ(Javier Milei)大統領が議会に提出した労働法改正案に対する強い反対の意思を示した。
デモ参加者は「権利を減らすな、仕事と尊厳を増やせ」と訴え、労働者の権利擁護を求める声を上げた。今回の抗議デモは議会で改正案の審議が始まったのに合わせて実施された。
ミレイ政権が提出した案は労働市場の柔軟性を高めることを目的としており、労働者のストライキ権の制限や、労働時間の調整、退職金制度の見直しなど複数の項目を盛り込んでいる。法案はまた、労組が職場で集会を開く際に使用者側の承認を得ることを求める規定や、ストライキ時に一定のレベルのサービスを確保しなければならない「必須サービス」の範囲を拡大する条項も含んでいる。これに対して労組側は「労働者の権利を大幅に削ぐものだ」と批判している。
デモを主導したのは国内最大の労働組合総連合CGT。その書記長は演説で「われわれは権利を減らしたいのではない。もっと多くの仕事と尊厳がほしいのだ」と述べ、改正案の撤回を強く訴えた。労組側は油糧作物労働者らが24時間ストを呼びかけるなど、抗議行動を拡大している。
アルゼンチンでは物価高や失業が社会問題となっており、ミレイ政権は労働市場の規制緩和を通じて雇用を創出し、経済成長を促進したいとの考えを示している。ミレイ氏率いる与党・自由前進(LLA)は10月の中間選挙で下院における最大会派となり、上院でも勢力を拡大した。これを受けて議会は特別立法セッションを開始し、大統領が掲げる一連の改革を進めている。改正案はペロン主義の中道左派勢力や労組の強い反対を受けつつも、今後修正を経ながら成立に向かう見込みだ。
一方、労組側はこの改正が労働者を弱体化させるだけでなく、社会的不公正を拡大しかねないとして強く反発している。デモには多数の市民が参加し、改正に反対するプラカードや横断幕を掲げた。参加者の一部はミレイ政権の改革が労働者の生活条件を悪化させ、格差を深刻化させるとの懸念を表明している。
改革案の支持者は労働市場の柔軟性を高めることで企業の雇用意欲を刺激し、正規雇用の増加につながると主張。しかし、反対派は案が労働者の交渉力を低下させ、労働条件を企業側に有利に変更するものだと批判しており、成立後も社会的な緊張が続く可能性がある。
ミレイ政権は経済の停滞を打破するため一連の構造改革を進める方針を示しているが、労組との対立は今後の政治課題となる見込みだ。
