アルゼンチンに中国製EV到着、保護貿易主義から転換
この大量輸入はアルゼンチンの自由市場改革を推進するミレイ大統領の経済政策と密接に関連している。
.jpg)
南米アルゼンチンに20日、中国の大手自動車メーカーBYD(比亜迪)の電気自動車(EV)とハイブリッド車が初めて到着し、5800台超の車両がブエノスアイレス州の港で積み下ろされた。これは同国に初めて中国製EVが大規模に流入した事例であり、長年の保護貿易政策からの大きな転換点となっている。
この大量輸入はアルゼンチンの自由市場改革を推進するミレイ(Javier Milei)大統領の経済政策と密接に関連している。ミレイ政権は従来の高い関税や輸入規制を大幅に緩和し、外国資本と競争促進を重視する方向へ舵を切った。これにより、中国から年間最大5万台までの電気・ハイブリッド車を無関税で輸入できる新制度が導入され、今回の輸入が実現した。
アルゼンチンは過去数十年にわたり、ペロン主義政権下で保護貿易的な経済運営を続け、輸入車には35%もの関税を課して国内産業を守ってきた。しかしミレイ政権はこれを撤廃し、貿易障壁を低減させたことで、欧米やアジアからの輸入が急増している。昨年の輸入総額は前年比30%増を記録し、日用品から電子機器まで幅広い商品が流入している。
こうした動きは、トランプ(Donald Trump)米大統領が国際貿易で関税強化を掲げる姿勢と対照的だと指摘される。トランプ氏は米国の製造業保護を理由に中国製品に高関税を課す方針を示し、EUやメルコスールとの貿易協定でも緊張が続いている。ミレイ政権は一方で「アルゼンチンを開かれた経済へ転換する」とし、自由貿易促進と外国投資誘致の戦略を明確にしている。
中国製EVの流入は国内自動車産業や欧州勢から懸念を呼んでいる。欧州議会は今週、メルコスール自由貿易協定の批准を遅らせる決議を行い、欧州勢が中国製EVの価格競争で不利になるとの見方を示した。専門家は中国メーカーが低価格戦略と規模の経済を武器にラテン市場で存在感を高めており、欧米・日本勢との競争が一段と激化すると指摘する。
アルゼンチン国内でも意見は分かれている。中国製EVの到着を歓迎する声は、消費者の選択肢が拡大し自動車価格の引き下げに繋がるとして支持されている。一方で、国内で唯一の電動車メーカーであるセロ・エレクトリック社は、急増する輸入車が競争を激化させる可能性と共に、国内インフラが大量のEV需要に対応できるかについて懸念を示している。
ミレイ氏は21日、世界経済フォーラムで、「輸入規制の撤廃はアルゼンチン経済をより効率的かつダイナミックにする」と語り、自国の経済モデル転換への自信を示した。中国のEV市場拡大とアルゼンチンの自由化政策の融合は、今後の地域貿易構造に影響を与え続ける可能性がある。
