◎昨年就任したミレイ氏は過去の左派政権が残した借金を完済すると誓い、緊縮財政を推進。手厚い補助金を軒並み削減、物価統制を廃止し、自国通貨アルゼンチン・ペソの切り下げを含む抜本的な経済改革に着手した。
南米アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで21日、ミレイ(Javier Milei)大統領の緊縮財政に抗議する大学生たちが幹線道路を封鎖し、怒りの声を上げた。
学生たちは幹線道路に突進、市内各地で大渋滞が発生した。ドライバーたちは中指を立ててデモ隊に侮辱的な言葉を吐いた。
デモ隊は高速道路も占拠し、公立大学の授業料などを公費で負担する法案を可決するよう求めた。
デモに参加した男子学生はAP通信の取材に対し、「私たちは授業料の公費負担と先生たちの給与引き上げを求めるために政府と戦っている」と語った。
道路封鎖デモはブエノスアイレスで先週始まり、全土に拡大。公立大学の職員は21日から48時間ストライキを開始した。
ミレイ氏は今月初め、公立大学の授業料などを公費で負担する法案に拒否権を発動、下院に送り返した。
下院は3分の2以上の賛成でこれを成立させることができたものの、採決の結果、賛成160ー反対84で拒否権を覆すことに失敗した。
昨年就任したミレイ氏は過去の左派政権が残した借金を完済すると誓い、緊縮財政を推進。手厚い補助金を軒並み削減、物価統制を廃止し、自国通貨アルゼンチン・ペソの切り下げを含む抜本的な経済改革に着手した。
その結果、月次インフレ率は1桁まで低下。16年ぶりに四半期ベースで財政黒字を達成するなど、多くの経済的成功を収めてきた。
しかし、補助金頼みの生活を送る低所得者層はミレイ氏の激しいショック療法に耐え切れず、生活環境が悪化。貧困率の激増につながった。
チームミレイは教員の給与引き上げを含む別の法案も打ち負かした。
ミレイ氏のショック療法により、この半年で推定550万人以上が貧困状態に陥った。地元メディアによると、全国の教職員の70%以上が貧困ライン以下での生活を余儀なくされているという。
政府は教師の薄給を6.8%引き上げると提案。労働組合はミレイ氏を「大バカ者」と呼び、これを拒否。労組は63.5%の賃上げを要求している。
公立大学側はより多くの職員が待遇の良い私立大学への就職を希望し、離職者が激増すると警告している。
ブエノスアイレスの州立大学は先週、職員と予算が枯渇しているとして、一部コースの履修停止を余儀なくされた。
ミレイ氏の極右政党は議会の少数派に過ぎないが、左派の法案成立に必要な3分の2以上の賛成を阻止するため、他の右派政党と同盟を結んでいる。