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アルゼンチンが米ドル債の入札発表、市場の信頼取り戻せるか

債券名は「Bonar 2029N」。利率は年率6.50%、償還期限は2029年11月30日とされ、入札は12月10日に実施される。議会の承認は必要ない。
アルゼンチンのミレイ大統領(Getty Images)

アルゼンチンのミレイ(Javier Milei)大統領は5日、4年満期の米ドル建て債券(ローカル・ローン法=国内法に基づく債券)の入札を発表した。債券名は「Bonar 2029N」。利率は年率6.50%、償還期限は2029年11月30日とされ、入札は12月10日に実施される。議会の承認は必要ない。

この発行はミレイ政権が国際資本市場への復帰を模索する中で行われるものだ。過去の財政管理の失敗と2020年の債務不履行によって、アルゼンチンは長らく国際市場から資金調達ができずにいた。

政府としては、今回のドル建て債の発行によって市場の信頼を取り戻し、逼迫した外貨準備を補強したい狙いがある。

金融アドバイザー会社の予測では、この債券は価格が額面の「86ほど」で発行されれば、実質利回りは約10.5%から11%になる見込みだという。入札形式はこれまでの地元ペソ建て国債の入札と類似の手続きであるとしている。

アルゼンチンは早ければ2026年初頭に、約45億ドル規模の外貨建て債務の償還を控えており、さらに今月中に約400億ペソの国内債の返済も予定している。そうした中で、今回のBonar 2029Nの発行は、これらの債務を中央銀行の外貨準備に負担をかけずに再構成する試みの一環とみられている。

また、10月に行われた中間選挙でミレイ政権を支持する右派勢力が強い結果を得たことで、投資家の信頼は回復の兆しを見せており、今回の国債発行はこの政治的安定を背景にしたものでもある。

政府は声明で、「中央銀行の純資産を傷つけずに、ドル建て債務の償還や返済に対応する新たな戦略」と説明。ドル債の利回り低下も国の財政改善のシグナルと捉えられている。

しかしながら、過去の度重なる債務不履行による信用失墜、不安定なインフレ・為替の状況などは、依然として大きな懸念材料だ。仮に今回の債券が成功裏に発行されたとしても、長期的にアルゼンチン経済の健全性、外貨準備の持続性、そして国際市場との関係維持がどこまで回復するか、引き続き注視されることになるだろう。

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