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アルゼンチン労働改革法案、上院で審議始まる、抗議デモも

アルゼンチン社会は今、労働法改革を巡る歴史的な転換点に直面している。
2026年2月27日/アルゼンチン、首都ブエノスアイレスの議会上院(AP通信)

アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで27日、ミレイ(Javier Milei)大統領が推進する労働改革法案の採決をめぐり、議会上院で審議が始まった。これに先立ち、労働組合や野党、左派組織の数千人の抗議者が市内を行進し、議会周辺で反対の声を上げた。デモ隊はミレイ政権が提案する改革が労働者の権利を損なうとして、法案の撤回を求めている。

対象となっているのは、1960年代から続く労働法を大幅に見直し、企業に対して採用や解雇、退職金、団体交渉などの点で柔軟性を高める内容の労働改革案である。政府はこれを労働市場の活性化につなげ、外国投資の誘致や生産性向上、雇用創出を図る狙いだと説明している。アルゼンチンでは約40%の労働者が非公式な雇用形態にあるとされ、改革の必要性を主張する声もある。

しかし、労組側はこの改革が長年の労働者保護を後退させるものだとして激しく反発している。特にペロニズムに近い労組や野党は雇用の安全や賃金保障が弱体化し、労働条件の悪化を招く恐れがあると批判している。反対デモには鉄道労働者や年金受給者らも参加し、「改革は労働者を犠牲にするものだ」と訴えた。

上院はこの法案を賛成多数で可決し、下院も一部修正後に可決。上院が可決すれば、ミレイ氏の署名で成立する。政府は当初、病気やケガによる特別休暇時の給与を半減する条項を含めていたが、反発を受けて修正した。上院はこの修正案を受け入れるか、元の条文に戻すかの選択を迫られている。修正案を承認すれば、法案は成立へと大きく前進する見込みだ。

上院がこれを承認すれば、ミレイ政権にとって大きな立法上の勝利となる。ミレイ氏は3月の議会演説でこの改革をアピールする意向を示しており、国内外に改革の成果を強調する見込みだ。一方、反対派は法案成立後も抗議活動を継続する方針で、労組による全国的なストライキやさらなるデモが予想されている。

この労働改革をめぐる対立はアルゼンチン社会の深い分断を反映している。ペロニズムが支えてきた労働者保護の伝統と、市場原理を重視するミレイ政権の方針が激しくぶつかり、今後の政治・社会的影響は大きい。改革支持者は長年の経済低迷打破の糸口とみなすが、反対派は労働者の生活を危うくするものと見なし、国全体で賛否が分かれている。

上院の採決は賛成多数で成立する可能性が高いとみられているが、採決の結果とその後の動向が国内の政治・経済情勢にどのような影響を与えるかが注目される。アルゼンチン社会は今、労働法改革を巡る歴史的な転換点に直面している。

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